「除草剤グリホサートは安全なのか危険なのか」

・演 題:除草剤グリホサートは安全なのか危険なのか
・講 師:吉田緑・内閣府食品安全委員会委員
・進 行:小島正美(食生活ジャーナリストの会・前代表幹事)
・参加者:オンライン開催 82名
・文 責:小島正美
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【講演要旨】  世界中で使用されている除草剤のグリホサートは、その発がん性をめぐって、米国で訴訟が起きるなど大きな関心を集めている。グリホサートは2015年、国際がん研究機関(IARC)によって「グループ2A」(ヒトに対しておそらく発がん性あり)と分類されたが、JMPR((国連食料農業機関・世界保健機関合同残留農薬専門家会議)、EU(欧州連合)や米国、日本など先進国の政府は「発がん性なし」との評価を行っている。この違いをどう考えればよいのだろうか。いまなお一部のメディアでがんや自閉症などの原因の可能性があると時々報じられることから、吉田緑さんを招き、セミナーを行った。  講演のポイントは3つある。一つ目は、IARCの目的はハザード(有害な影響を起こすもの)を評価することであり、リスク(有害な影響が起きる確率とその強さ、具体的には有害影響が起きない量と摂取量の比較)を評価しているわけではないことだ。IARCが、がんの疫学研究で限定的な証拠があるとしたのは農業従事者であり、食品を介した消費者のことではない。つまり、食品を介した発がん性のリスクはないということだ。 二つ目は、IARCが採用した動物実験などのデータは学術誌などに公開されたデータだけだが、リスク評価で「発がん性はない」としたEFSA(欧州食品安全機関)や日本の食品安全委員会、JMPRはより質が高く、広範囲のデータ(GLP適合やOECDガイドライン準拠試験)を使って評価したということだ。つまり、生データの適切な管理や分析結果の精緻な解析、第三者による保証などの観点から見て、質の高いデータを使って評価したのはEFSAや日本の食品安全委員会のほうだということだ。 三つ目は、厚生労働省の報告によると、日本人が食事から摂取しているグリホサートの量は、使用した全ての食品に残留基準値(食品中に含まれることが許される限度値)まで残留すると仮定した過大な摂取量(理論最大1日摂取量)で見積もっても、長期摂取しても有害影響を起こさない指標値である許容1日摂取量(ADI)よりはるかに低いことだ。 具体的にADIと比べた数値は、一般の成人(7.1%)、乳幼児(17%)、妊婦(7.4%)、高齢者(6.7%)と、どの層もADIより低い値だった。ADIは毎日、生涯にわたり摂取し続けても影響のない量なので、それ以下なら、グリホサートによる健康への悪影響はないと見るのが科学的な結論になるという。 セミナーは定員いっぱいの参加者が集まり、関心の高さをうかがわせた。事前に参加者から寄せられた質問にも答える形での講演だったため、中身はとても充実していた。

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<除草剤グリホサートは安全なのか危険なのか:講演資料(PDF)>

<JFJ 2021年度第1回勉強会アンケート>

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