・演 題:紅麹事件の本質は何だったのか。サプリメントのあり方はこれでよいのか。
・日 時:2026年9月28日(月)19時~20時30分
・講 師:唐木 英明/東京大学名誉教授
・進 行:山﨑 毅
・参加者:会場参加24名、オンライン参加75名
・文 責:小島 正美
**************

<講演要旨>
私は、もともとは薬理学者として「健康食品は効かない。利用する価値はない。健康食品に効果があるならば、医薬品として世に出せばよい」と否定的な見解を長く持っていました。しかし、サプリメントの摂取によって、心臓病の罹患率が下がったり、加齢性黄斑変性症や白内障の罹患率が下がったりする米国の研究報告などを知るにつれて、考え方が変わっていきました。サプリメントを毎日少しずつ摂取することで長期的な効果があると分かっていても、それを短期間の臨床試験で証明することは非常に難しいということも考え方が変わった背景にあります。つまり、サプリメントが身体の働きを調節する機能をもっているという第三機能があることを考えると、サプリメントはセルフケアのひとつとして有効に利用できるのではないかと考えるようになりました。
米国やEU(欧州連合)、韓国、中国などではビタミンやミネラルなどのサプリメントを法律で定義し、食品と医薬品の中間に位置付ける「特別なカテゴリー」として分類しています。米国ではサプリメント健康教育法を制定し、教育を通じて過剰摂取などのリスクに注意を払いながらも、有効性を健康維持に活かすというスタンスをとっています。
ところが、日本ではいまだに食品と医薬品の2つの分類しかなく、健康食品(サプリメント)を国民のセルフケアに活かそうという国家戦略が全くない。
しかも、食品を「一般食品」と「いわゆる健康食品」に分け、その「いわゆる健康食品」の中に「特定保健用食品」「機能性表示食品」「特定栄養食品」「その他のいわゆる健康食品」という4つの分類(図参照)をつくり、消費者にとっては非常に分かりづらい。最近になって、「いわゆる健康食品」の中の錠剤やカプセルなどを「サプリメント」として分類するという複雑な分類まで行い、ますます理解しがたくなっています。

厚生労働省や内閣府食品安全委員会はサプリメントのリスクを強調し過ぎ、有効性(効果)を評価しないため、一貫して健康食品不要論を展開しています。効果を強調すると、それは薬機法に違反するというスタンスなので、いつまでたっても「食薬区分」の考え方のままです。これでは消費者が混乱するだけです。欧米のように健康食品を法律で定義し、食品と医薬品の中間にある特別なカテゴリーとして認め、有効に利用するという方向をめざしてほしい。
最後になりますが、紅麹サプリ事件は、健康効果が表示できる機能性表示食品(消費者庁所管)として流通していため、機能性表示食品を廃止すべきだという意見や新聞記事が出ていましたが、この事件は機能性表示食品自体に問題があったわけではなく、製造工程の人為的な管理に失敗したために起きた事件(アオカビの侵入で有毒なプベルル酸がサプリメントに混じった)です。ですから、同様の事件は特定保健用食品(トクホ)や医薬品でも起き得た可能性があります。それをぜひ頭に入れて、健康食品の安全性を議論してほしいですね。



