食料の未来を考える!約20年ぶりの食料・農業・農村基本法の検証・見直しについて
【2022年度第8回勉強会】

・演 題:食料・農業・農村基本法の検証・見直しについて
・日 時:2023年2月16日(木)19時~20時30分
・講 師:小林大樹(こばやし・だいき)さん(農林水産省大臣官房政策課長)
・進 行:小島正美
・参加者:会場参加20名/オンライン参加59名
・文 責:小島正美
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 日本の農業はこれからどこへ、どのように進もうとしているのか。その核心部分を農水省の担当者から聞くセミナーだった。日本の農政の憲法ともいわれる「食料・農業・農村基本法」は1999年に制定された。この法律は①食料の安定供給の確保②農業の有する多面的機能の発揮③農業の持続的な発展④その基盤としての農村の振興、を理念に掲げて、政策を展開してきたが、制定から約20年がたち、見直しが必要とされる局面を迎えた。
 そこで、農水省はその総合的な見直しに向けて、食料・農業・農村政策審議会に基本法検証部会を設置、昨年10月から検証部会で議論を始めた。今年6月を目途に最終案をとりまとめる予定だ。
 今年3月27日に第12回検証部会が開かれ、審議は大詰めを迎えているが、小林大樹氏の講演は9回目(2月10日)の検証部会が終わったあとに開かれた。検証部会で議論されている問題は多岐にわたるが、大きなテーマは主に4つだ。
 一つ目は「食料の安定供給の確保」だ。国内の農業生産の拡大、穀物や肥料の備蓄の拡大、人口減少が進む過疎地での食料品アクセスの確保、国内で育成された優良品種の海外流失への防止、フードバンクの整備など幅広い問題が議論されている。
 二つ目は「日本の農業の持続的な発展」だ。今後20年間で約4分の1まで激減する農業従事者の確保、経営規模の拡大、需要に応じた農地の転換(需要が減るコメよりも大豆や小麦、飼料用作物などを増やす)、ドローンなどを活用したスマート農業の推進など検討されているテーマは幅広い。
 三つ目は「持続可能な農業の確立」だ。農業の多面的な機能(洪水防止など環境の保全、水源の涵養、気候緩和の機能、農村文化の継承など)の維持、有機農業と有機食品市場の拡大、環境によい輸入原材料の調達などが主に議論になっている。
 4つ目は「農村の振興」だ。高齢化が進む農村でインフラ整備(農業用用水路の整備、集落の維持、鳥獣による農作物の被害防止など)をどう進めるかが議論されている。
 小林氏はこうした多岐にわたるテーマについて分かりやすく、簡潔に解説した。日本の農業がかかえる問題点がよく理解でき、今後、どのような方向に進むのかに関するイメージが頭で描ける好セミナーだった。

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