・演 題:好きなものを食べてやせる 元大学教授が実践するダイエット法教えます
・日 時:2024年9月17日(火)19時~20時30分
・講 師:堀口逸子/前内閣府食品安全委員会委員
・進 行:平沢裕子
・参加者:会場参加15名、オンライン参加16名
・文 責:平沢裕子
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公衆衛生とリスクコミュニケーションが専門で、前内閣府食品安全委員会委員の元大学教授の堀口逸子さん。骨折をきっかけに10㌔以上の減量に成功した体験をもとに編み出した「好きなものを食べてやせるダイエット法」についてお話しいただいた。
ダイエットのきっかけは、新型コロナ禍で両脚を骨折し入院、病院食だけの生活を約2カ月したこと。両脚骨折なので1日300歩も達成できない状態だったのにやせていき、これはいったい何なのだろうと思った。退院後、管理栄養士の平川あずささん(JFJ会員)に病院食を自分の家で再現できないかと相談、アドバイスに従い実践したところ、1年半で12㌔やせた。健康診断に行ったら、数値もよくなっていた。入院でお酒を飲んでないので肝臓のデータがよくなったのは分かるが、それ以外の数値も改善していた。
病院食でやせたのは、それまでは食べ過ぎていたということ。病院食というコントロールされた食事を3食とって初めて認識できた。栄養の話は、栄養士のような専門家は別だが、そうでない人には分かりにくい。「バランスよく栄養をとりましょう」と言われても、「バランスをとるとは?」「エネルギーのコントロールって?」と疑問だらけ。
大学院生のころ、長崎大学のチームに入って栄養と運動の調査をしたことがある。そのときに3日分の食事内容をつけてもらうということをやったが、この調査の正確性はどこにあるんだろうと思っていた。都会に住んでいる人と漁村に住んでいる人では食生活が全然違うのをどう判断するのか何も示されない。研究代表者は「レシピが分からないスペイン料理はどうしたらいい?」との質問にも「無視してください」と回答していた。調査にアカデミックな部分がまったく感じられず、私はちょっと引いて見ていた。
2024年5月に『最強の食事戦略』という本を出した。ダイエット本はたくさん出ているが、5段階評価の5を目指したものが多い。でも、多くの人は今、1か2にいるのではないか。2の人にいきなり5を目指せといっても難しいと思う。私の本は3を目指す本。今よりも健康になるにはこうですよ、という本にした。
考えてみると、私たちが食事に求めるのは、健康的な体をつくることと、見た目で太っていない、つまり適正な体重を保つことの2つ。この2つは完全にイコールではない。健康な体を作るポイントは栄養のバランス、適正な体重を保つポイントはエネルギーのコントロールになる。栄養のバランスは何を食べるかの話で、エネルギーのコントロールは何をどれだけ食べるかの話だ。何をどれだけ食べるかは、1食でなく、1日、1週間、1カ月といったスパンで考えないといけない。
「三色食品群」は、食品を見た目の色でなく、食べ物に含まれる栄養素の働きを元に「赤」「黄」「緑」の3色に分類したもの。赤は血液や筋肉など体を作る食品、黄は体を動かすエネルギーを作る食品、緑は体の調子を整える食品。この3色をまんべんなく食べることで栄養バランスが整う目安になる。まずはこれを使うのがいい。ただし、これは1957年に開発されたものであり、現代の食生活に合わせて改善すべきと提案していた(本参照)。
「ダイエット=食事制限」と思っていたが、平川さんの指導では「野菜が足りない」「たんぱく質不足」「果物や海藻も食べて」と、足りないから食べろ食べろと言われた。「食べるな」でなくて、「この栄養が足りていないから食べて」で、この考え方が大事なんだと実感した。
近年、疫学調査で果物と健康との関係が分かってきた。果物は食べた方がいい食品だが、日本人で果物を毎日食べている人は3割に満たない。果物を食べない理由が、値段が高い、日持ちしない、買い置きできない、皮をむくのが面倒、他に食べる物がある―などだ。確かに果物は安くはないが、今はコンビニで冷凍の果物も売られている。冷凍だと皮をむく手間も不要だし、買い置きできるので、こうしたものを上手に利用するといいと思う。
健康のために「1日3食」とよくいわれる。3食なので「朝食を食べましょう」ともいわれるが、3食とればより健康になるという根拠はない。私が大学院生のころは「1日30品目とろう」ともいわれた。いろいろな物を食べようというメッセージでもあったが、30品目のために食べる量が多くなりメタボになった人も。また和食が健康にいいといわれるが、これはどうか。農林水産省が健康にいいと言っている和食は日本型食生活のことで、これは昭和50年代の食事だった。当時の食塩摂取量は1日14㌘、今の推奨量の2倍もとっていた。当時の和食がいいという単純な伝え方はやめた方がいいと思う。
食べる量の話を。一般の人は一人前の標準量を知らない。私も知らなかった。ご飯小盛1杯といったとき、どんぶりの小盛か、ご飯茶碗の小盛か、器のサイズが異なれば小盛の量が違うのに、小盛をスケールにしている。腹八分目も、人によって違う。
食生活を変えていくときに何が必要か。ダイエット法で「よく噛んで食べる」「品数を多くする」というのがある。食事開始から時間がたつと満腹感を得られるので、これは食事時間を長くするためのものだ。私も朝食はナイフとフォークを使う。はしで食べるより時間がかかるので。
ダイエットには満腹感だけでなく、満足感も大事。和食が健康にいいというのは、お茶碗を持って食べるので、食事量が制限されることもあるのではないか。
食べた物が体重に反映されるのは2日後、継続して効果をみるには3週間が必要といわれている。いずれにしても時間がかかるので、気長にやるしかない。
講演後の質疑応答は以下の通り。
(司会・平沢)骨折で入院したときの病院食は物足りなくなかったか?
(堀口)物足りなかった。退院後は、その量でどう満足させるかを考えた。
(平沢)骨折前は1日3食の他にも食べていた?
(堀口)1回の食べる量が多かった。ご飯茶碗が大きくて、見栄えがよくなるようにたくさん盛り付けて食べていた。
(平沢)今は満足感と満腹感があるからやせた体重が維持できているのか。
(堀口)そうです。
(質問者)管理栄養士の話は、食べたのもが全部吸収されるというもので違和感を覚えていた。糞便は日々変わり、食べるときの状況によって吸収も違うはずだ。
(堀口)おっしゃり通りだと思う。私はもともと食品安全で、食品安全では栄養でないものを扱っている。なまりやカドミウム、ヒ素などで、これらは体の外に排出されていく。栄養士さんは食品の栄養物質のことしか考えていなくて、非栄養物質の話をすることがない。私も違和感がある。
(質問者)体重はいつ測るのか
(堀口)ダイエットするときに水2㍑が大事といわれた。2㍑は野菜の水分も含む。私はもともと早食いで、以前は食べてからお茶を飲んでいたが、今は食べながらお茶を飲むようにしている。食事の時間が延びるとお腹がふくれてくるし、水分量も以前よりはとれていると思う。
(質問者)たんぱく質の量はどう調整しているのか
(堀口)コンビニ飯は表示があるのでそれを参考にしている。
(質問者)料理を自分で作るようになったのか
(堀口)作るときは二人分作り2回に分けて食べる。1食分を作るのは結構大変なので。ビーフンやカレーは野菜や肉を倍にして、2回に分けて食べる。
(質問者)野菜ジュースは野菜に入らないといわれるがどう考えるか
(堀口)私は野菜ジュースは野菜としてでなく、調味料として利用している。