第14回公開シンポジウム「日本の『米』、どうする?」の報告

基調講演の概略

大本幸子氏(食生活ジャーナリストの会会員・フリーライター)

 農家は高齢化と後継者不足で悩んでいますが、安全で安心な米作りを目指し、対策を立てて農業をしています。そこに農家の底力もみました。集落全体で行う集落農業や、若者の請負制度、休耕田を集落として活かす方法、知恵の賜物による早場米への取り組みもありました。北海道中富良野では、消費者からの声で現場が動き、減農薬栽培に取り組んでいます。

 石垣島は日本の最南端の米作地帯で、二期作が可能です。平成5年の冷害で、岩手が種籾さえ取れない状況の時、石垣島は岩手の田植えまでにと米を作り種籾を送りました。岩手県は石垣島に感謝し、「かけはし」という名の米を作りました。逆に石垣島が台風被害にあったとき、岩手県からはすぐに種籾が送られ、石垣島では無事に田植えができました。かけはしを使って作った石垣島・請福酒造の泡盛、南雪のボトルには、この話が書いてあります。

 いまや個性化の時代です。佐賀県では農薬や化学肥料を使わず、川の両脇の葦を堆肥にし、古代米を作っています。古代米はミネラルが豊富な米で、スローフード大賞を受賞しました。コシヒカリ全盛の現在、日本にあった古代米に注目し、環境にやさしい農法で全国の消費者に提供しました。

 では、食べる側は何を考えればよいのでしょう。お米を知ることです。炊きたての白いご飯ほど美味しいものはありません。消費が伸びないのは米の味が悪いとか、宣伝が足りないからでなく、パンも麺も美味しいからです。米の消費宣伝をする前に、子供たちに正しい箸の持ち方や茶碗の使い方を教えるべきでしょう。米の基本は家庭で炊いたごはんであり、炊いたごはんの基本は茶碗と箸なのです。米がきらいなわけではなく、子供達は基本を教えれば好きになってくれるのではないでしょうか。

基調講演する大本幸子氏
(幹事 大森良美記)

パネルディスカッションの概略

パネラー: 清水信子氏(料理研究家)、西島豊造氏(米穀販売店・スズノブ代表取締役)、 堀米荘一氏(米生産農家・宮城県角田市)、大本幸子氏(JFJ会員・フリーライター) コーディネーター: 島崎幸子(JFJ代表幹事)

 シンポジウム第2部のパネルディスカッションでは、料理研究家の清水信子先生、米のソムリエで米小売店「スズノブ」を経営する西島豊造さん、宮城県の米生産者の堀米荘一さん、ジャーナリストの大本幸子さんが「日本の米をどうする?」をテーマに意見交換した。コーディネーターは島崎幸子代表幹事。

 「日本人1人が年間食べる米は、年間61キロ。10年前に比べ、6~7キロ減っている。米が好きなはずの日本人が米を食べなくなっているのはどういうことなのか?」。これが、今回のシンポジウムの大きなテーマ。この問いかけに、各氏は日々の仕事を通じて感じていること、危機感を抱いていることなどにも触れ、活発に議論した。

 西島さんは、「料理番組では、ただ単に米3合、米2合というだけ。寿司に合う米、チャーハンに合う米、弁当に合う米など、米の味や特徴もさまざまなのに、料理のテレビや本が単に「米○合」とだけしか表現しない今の現状では、米の消費にも限界がある。100人の人がいれば、100種類の好みがある。コシヒカリは甘くて粘りもあっておいしいが、ほかにも特徴ある米はたくさんある。コシ一辺倒ではなく、好みに合わせて好きな品種をグラム単位で買えるようにならないと、米は売れるようにならない」と、小売店の発想の転換が一番の課題だとした。

 清水先生は、「米○合と言っているのは私たちだからどきっとしますね」と笑いながらも「味覚がおかしくなっている若い人たちには、米の味の違いが分かる以前に、家庭の味、手作りの味を分からせなければいけない。食べるものは家庭で作る、自分で作るということを定着させる必要がある。米の問題は家庭の食生活が崩壊していることから起こる」とし、家庭での食事のありかたを見直す必要があると強調した。

 生産者の堀米さんの住む角田市は、東京・目黒区の小学生との交流を長年続けている。掘米さんはこうした経験から「一度米作りを経験した子は、ご飯粒を茶碗に残さないし、多少わらが入っていても全部食べてしまう。米の輸入自由化の際も、子どもたちは、米を作ってくれる人がいるのだから何とかしなければならないと言い出した。米を育てて初めて食べる意味が重みを持ってくる。小売店には、ただ米を商品として売るだけではなく、生産のようすや生産現場の香りまでも、伝えてほしい」と訴えた。

 島崎コーディネーターは、「ある調査では、家庭の子どもの朝ご飯が菓子パンやジュース、プリン。お父さんはバナナ。米なんて入っていない。米の問題を考えると、家庭の食事がきちんとしていることが大前提になる」とし、「米は米だけの問題ではない。家庭はもちろん、環境、農業などすべてを包括する問題だ」と締めくくった。

パネラーの諸氏
(幹事 近藤真規記)

いくつかの新しい試みが‥~シンポジウムを終えて

代表幹事 島崎 幸子

 食生活ジャーナリストの会恒例の公開シンポジウムは、テーマを「日本の『米』、どうする?~私たちは『米』の問題をどう捉えていったらよいのだろうかーとして、去る3月3日文京シビックセンター小ホールで行われました。当日は113名の参加者とともに日本の米の現状と食生活のあり方などについて討論を深めました。

 今回のシンポジウムを企画するに当たり、幹事会ではいくつかの新しい試みに挑戦してみましたので、改めてその取り組みについてご報告しておきたいと思います。

 まず1点目は会員アンケートの実施です。私たち食生活ジャーナリストが、普段米とどう関わっているのかそのアンケートの結果を背景にシンポジウムを構成したということです。72名の会員から回答が寄せられ、約半数の会員の実態が把握できたことが、問題提起のスタートラインとなりました。

 2点目はこのシンポジウムの運営に協賛会社を募ったことです。それは会員の会費と当日の参加費だけで大きなイベントを実施するには予算が厳しいという事情はありましたが、それよりもこのシンポジウムをより多くの人に開放して、様々な形で協力をいただきながら、食生活ジャーナリストの会の活動をもっと理解してもらうということにありました。

 会員が様々な媒体を通じて仕事を進めるとき、多くのメーカーや企業・団体から発信される情報をきちんと捕らえ、私たちなりに消化して読者や消費者に伝えることの大切さを現場に近い企業の方々と交流することで現実的に経験し、理解していきたいと考えたからです。協賛会社が付いたことによりシンポジウムの主旨が損なわれることのないように、議論を重ねたことは当然のことでしたが、その結果はいかがでしたでしょうか。参加した皆さんの判断にゆだねたいと思います。

 3点目としては、会員の作品コーナーをシンポジウムの会場に設けたことです。初めて会員の作品がまとめて多くの人に触れることができました。しかし、展示の仕方や出品点数をもっと多くするなど改善の余地はまだあるように思いました。

 今回のシンポジウムに対して参加した知人から「パネリストの発言が本論から外れないで進行し聞きやすかったが、時間がなく会場の意見を充分に聞けなかったのが残念だった」と電話で感想が寄せられました。また「有意義な時間を過ごすことができました。食はもちろん環境や財政難など、子供たちの時代はどうなっていくのだろうと不安なこの頃ですが、自分にできることを少しずつやっていくしかないのかなという思いを新たにしました」(フリーライター・中野留美さん)という葉書もいただきました。“食生活ジャーナリストが生産現場を知る1年“とした平成16年度でしたが、今回のシンポジウムもその流れに沿って実施したものです。これからの食生活、また会員の活動に、少しでもお役に立つことができればと願っています。

代表幹事 島崎 幸子

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