第20回公開シンポジウム「食メディア」にウソはないか」の報告

■日時:2011年1月23日(日) 14:00~16:30
■会場:東京都渋谷区 東京ウィメンズプラザホール
■来場者:150名
■パネリスト:長沢美津子  『朝日新聞』生活グループ記者
       三保谷智子  『栄養と料理』編集長
       山本謙治   農産物流通コンサルタント
       河上多恵子  食生活ジャーナリスト
 コーディネーター:佐藤達夫(JFJ代表幹事)
 司会:佐々木仁子(JFJ会員、フリーアナウンサー)

 節目に当たる第20回JFJ公開シンポジウムでは、“初心に戻る”ことを強く意識して、ジャーナリズムの役割を再認識するテーマを選んだ。同時に、このところ会員以外の講師を招聘することが多かったのだが、やはり、初心に戻って、パネリストはすべて(コーディネーター・司会も)JFJ会員に依頼した。
 第1部のパネルディスカッションでは、まず長沢氏が「記事の役割と壁」と題して、新聞というメディアの責任の大きさを痛感していることを披露。自身が手がけた実際の記事を例にとりながら、どのようなスタンスで取材をしているか、また、執筆にあたっては、相反する要素を持つ「正確さ」と「わかりやすさ」をどのようにバランスしているかなどを紹介した。読者が100人いれば100通りの価値観・世界観があるので、その「見取り図」を示せるようにフェアな情報提供を心がけていると結んだ。
 三保谷氏は歴史の長い月刊誌の編集長として、栄養学は(だけではなくすべての科学は)つねに変化・進歩しているので、記事を書いた時点では正しくても、後になって必ずしもそれだけが正しいというわけではないこともあり得るという悩みを告白。これからも、栄養情報そのものだけではなく、栄養情報の選択力や判断力を養う手伝いをしていくと、雑誌編集者としての方向性を示した。
 山本氏の講演は「ネット上での情報発信がもつ意義と課題」。ジャーナリストとしての活躍はもちろんだが、ネット上の人気ブロガーとしても有名な山本氏は、ネット情報は玉石混交の状態なので、接し方に注意が必要であると警鐘を鳴らした。しかし、情報の速さや広がりや双方向性という点で他のメディアにはない利点もあるので、これからもますます延びて行くであろうと推測。読み手のリテラシーの重要性を強調した。
 JFJ副代表幹事(当時)でもある河上氏は「情報無料化の中で」というテーマで。フリーランスジャーナリストの現状を報告。フリーというのは立場は「自由」であり、経済的には「不安定」であり、また媒体としては「タダ」という意味も持つ。最終的には責任をすべて自分自身が持つ、というジャーナリストの基本形だという。近年、会員の中にもフリーランスが増えてきたが、河上氏の言葉に共感した参加者も多かったようだ。
 第2部の意見交換では、冒頭に、NHKキャスターの山本美希氏(JFJ会員)が発言した。テレビはその影響力がとても大きいので、この会の仲間と情報交換をするなど、できる限りの勉強をしている。科学や世界の変化についていけないこともあるが、たとえ専門家の言うことであっても、確認できていないことに対しては安易に「ハイそうですね」と相づちを打たないように心がけていると、苦心の一端を披露した。
 その後、会場から多くの質問が寄せられ、いつもながら、時間いっぱいまで熱心な議論が交わされた。
 第20回JFJ公開シンポジウムの詳細は『報告書』(1部1,000円)にまとめられている。希望者は事務局まで。

タイトルとURLをコピーしました