「日本の米」の現在、そして未来を語ろう
~令和の米騒動はなぜ起きたのか~
【第35回公開シンポジウム報告】

【テーマ】「日本の米」の現在、そして未来を語ろう
      ~令和の米騒動はなぜ起きたのか~
【日 時】2025年11月5日(水) 13:00~17:00、懇親会17:30~19:00
【場 所】東京大学農学部フードサイエンス棟中島董一郎記念ホール
(ハイブリッド:Zoom会議)
【主 催】食生活ジャーナリストの会(JFJ)
【参加者】87名(オンライン参加を含む)

 

【プログラム】
司会:田尻 泉(JFJ幹事)

【開会挨拶】
畑中 三応子(JFJ代表幹事)

【基調講演】
荒幡克己氏(日本国際学園大学教授)
「令和米騒動-変わりゆく食生活の中で今でも米への敏感な反応-」

第一部:令和米騒動の要因を分析すると、第一には天災の要素としては、なれない高温気象がひっ迫していることが挙げられる。第二に人災としての要素があり、政府の読み違い、正常な商行為としての在庫確保のあいまいさや投機目的の在庫確保の保持があった。また、経済学者(ご自身を含め)の分析不足もあったのではないかと語りました。

第二部:産地の動向・増産余力の数量解析を、西日本(九州・中四国・近畿)と東日本(関東・北海道・東北)を比較しながら解説。積極的で緻密なフィールドワークを基に、写真と数値で発表された。東西格差はあるか、増産余力はある。しかし、10年後には担い手不足が深刻になることを警告した。

第三部:世界の米生産をテーマに、世界の進歩と日本の停滞を比較。米輸出に注目していきたと述べました。特にアメリカや中国の伸び幅が大きく、日本は単収停滞が目立つ。主要因は「良質米(うまい米)生産のみに固執した産地間ブランド競争」がある。単収向上による競争力強化、業務用米への輸入米浸透を防ぎ、国内で低価格で消費者に米を提供することでコメ離れを抑える。そして、輸出の道も開くことが大切だと提案。

第四部では、食生活の変容と消費量の減少について述べました。昭和50年代以降の食生活における、メニューの洋風化・多様化が進んだ結果、米消費が緩やかに減少しそれが止まらない。世界の食生活でも顕著な傾向であるFood Convergenceの動きは加速している。農村景観に食生活を合わせるというより、食生活に農村土地利用を合わせていくことも必要か。

【パネルディスカッション】
◆佐藤正志氏(新潟ゆうき農業法人)
「流通の混乱」

農業法人「新潟ゆうき」の代表であり、自らもコメの生産に携わっている。また数々の組織や委員会の中心的メンバーとして現場の目線から情報の発信と提言をしている。米の安定供給と地域農業の振興にも取り組んでおられます。

 「米流通の混乱」をテーマに現場の声と、数々の会議に参加されている経験値から発表。
国内需要を過少判断したことが最大の原因だったと考える。一生産者としては高い米価を望んでいるわけではない。米価が高くなることで、消費者がコメ離れをすることを懸念する。生産者・流通業者・消費者の三者が良い制度設計が必要。「インバウンド需要を想定できなかったというのは、言い訳だと感じる。「食料システム法」が2026年4月からスタートし、生産流通のコストの見える化をする。そこに注目し、期待したい。

◆柏木智帆氏(米・食味鑑定士/お米ライター/小児食生活アドバイザー)
「米食文化を再興する〜お米と食育〜」

米・食味鑑定士、ごはんソムリエ、そしてお米ライターとして活躍。新聞記者から就農、その後、福島県の米農家へ嫁ぐ。一児の母でもあり、お弁当作りにも奮闘中。

 日本人の「食性」から食卓を考えることを見直すことを柏木さんは提言しました。それは、子供の健康にも影響が出ていること、「お米は太る」ということはないという健康面からのアプローチで解説。食生活を決める大切なことは「風土」であり、自然条件であるとも。完全米食給食で子供の健康改善と米食文化継承に成功した千葉県南房総市の小学校の例を紹介。
 今回の米騒動を機に、そもそも、「お米って?」ということを考えたり、議論したりする貴重な機会になったのではないか。

◆佐藤洋一郎氏(ふじのくに地球環境史ミュージアム館長・京都府立大学客員教授・静岡大学客員教授)
「米と日本人一瞥」

遺伝学の立場から稲の起源の研修をされていて、文理融合の視点から農業と環境の関わり、食と文化の関わりを広く研究。

 “日本にとって米・稲作とは何か?”をテーマにお話しいただきました。
 今回の米騒動は、お金の話ばかりよく出てくることが欲求不満だった。「そもそも米って?」の議論がメディアでも取り上げているところが少なかった。
 「米作りは国作り」である。風土(人と自然の相互作用)を上手に活用し、知恵を結集して築き上げてきたものが稲作。
 “海の恵みは森と田んぼから”であり、水田は多面的な機能をもっていることは、日本そのものである。米料理の多様性の視点からもかけがえのないものであることは明白。米・もち・酒・発酵を尊んできた先人の知恵の継承は「文化」として、唯一無二であり、米づくりは和食そのものである。
 行き過ぎた食のグローバル化の揺り戻しだったのではないかと、佐藤さんからの警鐘は、続きました。

【ディスカッション】

ファシリテーター:矢内真由美(JFJ幹事)

文責:矢内真由美(JFJ幹事)

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