第12回公開シンポジウム「どうする!若い世代の食事情」の報告

食の外部化、世代間の差へどう対応するか

日本水産株式会社食材商品部部長 渡部祐人氏

 この1~2年、BSEや食品表示問題などで食品業界には大きなダメージを受けたところもありますが、幸い、魚に対しては健康志向やお魚ソングの人気などの追い風もあって、あまりその影響はありません。とはいっても、国際的に水産品への購買力が高まる中で、日本の家庭における魚介類への支出は25年前のレベルにとどまっています。本日のテーマである若者世代の食への関心あるいは無関心を、食への支出動向から考えてみましょう。
 ある調査によると、20代の若者世代ではレジャー、住居、耐久消費財への支出が増え、50代の中高年は温泉好きでローカル食に興味をもっているという結果があります。購入する食品別に見ると、20代では肉、油脂、卵などの購入額が高く、60代ではくだもの、海草類、魚介などです。食マップでみると、若者層にはぞうすい、みそラーメン、にぎりずしなど外食で食べるものがよく登場し、年齢が進むにつれて従来の家庭料理のメニューが多くなります。それでは、二つの世代に食の共通点があるのでしょうか。
 例を挙げると、若者の間に、通常魚介は食べないが、おにぎりの具になれば何の抵抗もない、伝統的な日本の食品である納豆が人気があるというように、世代を超えた価値観の一致する食べ方があるのです。よく「食は保守的である」と言われますが、異なる層の、異なる価値観によって受け入れられるものがあるということで、私たち生産者は価値あるものと認められる商品を提供しなければならないと思っています。

21世紀は食への挑戦である

イオン(株)幕張本社SSM商品本部農産商品部部長 藤井滋生氏

 流通を取り巻く消費者の食生活の現状は、ライフスタイルの変化なしでは語れません。女性の社会進出、産業構造の変化とあいまって、団塊ジュニアが成人し、ファミリー化したことも変化の要因でしょう。この人達はマヨラー、ケイタイ世代などの流行語を生み出した世代でもあります。
 数字から食の変化をみると、量と価格の点では野菜や果実の価格は変わらず、消費量は右肩下がりとなっていますが、その反面、カット野菜やカットフルーツが簡単、便利ということで伸びています。
 時間的な面では、買物時間の変化があります。夕方に主婦が買物をするというスタイルがくずれ、仕事やレジャーのあとの夜に移行しています。営業日も365 日体制にならざるを得ません。
 昨年は食の提供者への消費者の信頼が大きく揺らいだ年でした。この問題については、私達は、第3者による監査と認証が必要であると考えていますが、まず、自分達が正直であるために、消費者への情報公開を実践に移しました。
 未来へ向けての取り組みとしては、安全、環境、地域との関わりが柱です。消費者が求める簡単、便利な食材を提供する一方で、生産者の顔が見える商品を提供する。環境問題には、地域循環型農業の生産品を積極的に扱うことで対応し、結果として地域の活性化に役立つこと。隠れた食のアルチザンを発見し、紹介すること。すなわち、スローライフとファーストライフ、地域とグローバルの調和をはかることです。
 食の創造イコール人の創造ではないでしょうか。若い世代の食の貧困の問題は、より若い世代に食の歓びを知ってもらうことで、夢のある未来が開けてくるでしょう。

若い世代の食生活の実態は?展望を開くのがメディアの役割

(株)ライブリッジ くらしHOW研究所所長 河上多恵子氏

 私達が最近行った、インターネットによる若い世代への調査結果をふまえながら、本日のテーマについて話をしたいと思います。この調査でわかったことをいくつか挙げてみましょう。

  • 食事の回数が変わりつつある(1日3食がくずれ始めている)
  • お菓子(スナック)を食事代わりにする
  • 決まった時間に食事をするよりも、小腹を満たす傾向がある
  • 栄養バランスがたいせつとは思っているが、油脂のとりすぎが問題になっていることは知らないなど、基本的な知識に偏りがある
  • 手間を惜しみ、手軽さ、簡便さを求めることからコンビニ、ファーストフードへの依存度が高く、サプリメント摂取も多い
  • 食事の質よりも見た目を気にする傾向が多く、食事の盛りつけにはこだわる、だれと一緒に食べるか、居心地よく食べられるかが関心事

 このような結果の背景には、調査世代の生まれ育った時代が考えられます。つまり、マクドナルド世代のジュニアが成人し、中には母親になった人もいるということです。

 次に指向性をみてみましょう。大多数の人が、不安な現代での拠りどころは家族であると考えています。家族の絆を確認するイベントが好きで、ファミリーイベントの場として食事が重要であると考えてはいるのですが、その重要な食事を“できあい”で満たす傾向は変わりません。また、美容、ダイエットに関連する食の比重がさらに高まっています。

 この結果は、若い世代の食の貧困を示したものとも言えるのですが、将来への展望はあるのでしょうか。それにはメディアのリアルタイムで正しい情報提供が不可欠だと考えます。

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