「美味しい料理の哲学 ~断章~」の報告

・講 師:廣瀬純 (龍谷大学経営学部教授)
・会 場:辻調グループ国際交流センター1F「ボーヴィリエ」
・参加者:26名
・まとめ:須山泰秀(JFJ会員)

今回の勉強会は「食」に対して、果たして論理的な思考はなされてきたのかという、極めて刺激的で哲学的なアプローチをその著書『美味しい料理の哲学』(2004年刊)で試みた、現代思想及び映像論の気鋭の研究者・廣瀬純氏をお迎えしました。

冒頭、廣瀬氏は「この著作は2004年に著したものですので、それから私自身毎日勉強していますので少しずつ賢くなっています(笑)」とユーモアを混めて話を始められました。

この著作で廣瀬氏はすべての議論に通底する仮説をたてます。

<「焼き鳥」をつくるというのは、鶏肉という≪肉≫に串という≪骨≫を与えて≪骨付き肉≫を構成するということなのであり、それによって、この≪肉≫が潜勢的な形で有している「焼き鳥」としての≪美味しさ≫を現勢化させるということなのです>、と。

さらに、仮説として<すなわち料理とは≪骨付き肉≫を作り出すことではないか>、あるいはすべての美味しい料理には≪骨付き肉≫というひとつの共通/共有の構造があるのではないかという論理を展開されました。

約1時間余りの講演時間の中で廣瀬氏として、十分には論理を展開しきれなかった感がぬぐいきれませんが、参加者のみなさんの思考は十分に撹拌されたことと思います。

今回の勉強会では、料理に対して、またその美味しさに対して、私たちが(おそらく)思いもしなかったアプローチを学ばせていただきました。

最後に私見ですが、この著作『美味しい料理の哲学』はまさに非=料理書の一冊なのではないでしょうか。
だからこそ、とても意味のある著作だと考えた次第です。

<廣瀬純氏プロフィール>
龍谷大学経営学部教授(映画論、現代思想)。1971年生まれ。著書:『アントニオ・ネグリ革命の哲学』(青土社)、『蜂起とともに愛が始まる』『美味しい料理の哲学』(共に河出書房新社)、『暴力階級とは何か:情勢下の政治哲学2011-2015』(航思社)、『シネマの大義 廣瀬純映画論集』(フィルムアート社)が7/25発売予定。

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