「食品表示の一元化新法をめぐって~3つの関係法令を統一、新たな表示制度へ~」の報告

・講師:鬼武一夫氏(日本生活協同組合連合会品質保証本部安全政策推進室長)
・2012年9月27日(木)18:30~20:00
・於:東京ウィメンズプラザ会議室
・参加者:28名
・まとめ:佐々木恵美

平成22年3月30日閣議決定した「消費者基本計画」(平成23年7月8日一部改定)を受けて、消費者庁は食品表示の一元化に向けた法体系のあり方等を検討するため、学識経験者、消費者関連団体、事業者団体等で構成される「食品表示一元化検討会」を設置し、昨年9月から8月3日まで12回の会合を重ねてきた。 今回の勉強会では、検討会構成員の1人でもある日本生活協同組合の鬼武氏を講師に招き話を伺った。

                                            

■食品表示一元化検討会

「食品表示の一元化に向けた法体系のあり方」「消費者にとってわかりやすい表示方法のあり方」「一元化された法体系下での表示事項のあり方」を検討事項に、事業者・消費者双方の立場からさまざまな意見がだされ、計12回の議論をまとめた報告書が8月9日に公表された。

■食品表示一元化検討会により定められたこと

新制度の在り方と目的
 食品表示に係わる現行制度は法律間の重複など複雑でわかりにくくなっていることから、食品を対象とする三法のうち食品表示制度に関する規定を抜き出して統合、新制度の目的は食品の安全性確保に係わる情報の消費者への確実な提供を最優先として、商品選択上の判断に影響を及ぼす重要情報の提供とした。
 また、過去の内閣府調査の結果からわかりやすさに役立つこととして、法律間において定義が異なる用語を統一・整理しルールを一覧化することが示された(用語の統一:「製造者」「加工者」の定義など)。
情報の重要性の整序と見やすさ(見つけやすさと視認性)
 出来る限り多くの情報を表示させることよりも、より重要な情報がより確実に消費者に伝わるようにすることを基本に検討することが適切であり、行政が積極的に介入するのはアレルギー表示や期限表示、保存方法といった安全性確保に関する情報を位置付けた(情報の重要性に違いがあることを前提とした制度設計)。
 高齢化社会の進展やアンケートにおいて、文字の大きさについて改善する必要性が高いとのことから一括表示の緩和(枠外記載)、文字を大きくすることの検討が必要であるとした。
義務表示事項の範囲
 表示を義務付ける事項の検討にあたっては、安全性確保に係わる事項を優先すると共に、それ以外に関しては監視コスト、その他の社会コスト、消費者にとってのメリットとデメリットを総合的に勘案。また、食品表示一元化にあたり、情報の確実な提供という観点から現行表示項目の検証を行うべきとし、必要に応じて、義務表示事項を柔軟に変更できるような法制度とすることが必要とされた。また、ガイドライン等の事業者の自主的な情報提供の取り組みや、消費者への普及啓発の充実も必要であるとした。
適用範囲
 原則として容器包装入りの加工食品を対象に食の外部化やインターネット等の新たな消費行動を踏まえた上で適用範囲を検討することとし、中でも中食や外食のアレルギー表示は重要と考え、さらなる自主的な情報提供が図られるよう環境整備を進めることが適当とされた。
栄養表示
 原則として、全ての事業者を対象に、予め包装された全ての加工食品を対象に義務化する一方、消費者全体にとって栄養供給源としての寄与が小さいと考えられるものなどは対象外とし、環境整備(現行制度のもとで現行の差の許容範囲に縛られない計算値方式の導入、データベースの整備や支援ツールの充実、消費者への普及啓発など)の状況を踏まえ、新法の施行後おおむね5年以内を目指し義務化。対象とする成分に関しては国際的な動向も踏まえつつ、義務化施行までに決めることが適当とした。

■食品表示一元化検討会および報告書に関する鬼武氏の所感

 食品表示一元化検討会に関しては、食品表示新法作成にあたっての手順と、新法の基本的な考え方および枠組み概要を決定してから議論を進めるべきだったのではないか。
 報告書に関しては、栄養表示制度は日本製品の海外輸出などを考えると国際的観点からも歓迎すべき内容だが、加工食品の原料原産地表示は、「消費者にとって原料原産地表示とはどうあるべきなのか」といった視点から、これまでの原料原産地に関する経緯をレビューし、その必要性と方向性を再整理すべき。また、さらなる拡大に関しては義務表示品目を拡大するよりも、ガイドライン等を整備して、事業者の自主的取り組みをさらに助長する取り組みを検討することが、真正性のある情報につながるのではないか。報告書は今後の検討事項が多く、一部の消費者団体による否定的な声が上がっているが、食品三法を一元化し食品表示全体をわかりやすさという観点から検討・整理されたことは成果といえるのではないか。
 検討会後、現行表示への早急な影響・変化はなく、現段階において決まったことといえば、今年度中を目標に食品三法を一元化した新法が法案提出、栄養表示について現行法制度下で環境整理が進められ、5年をめどに義務化、食品衛生法とJAS法間の定義が異なる用語の整理・統一が進められる。
 現在、法制局、各省との協議に基づき法律案作成作業が進められ、早ければ今年度中(2013年1月)の通常国会提出の運びとなる予定。同時に個別課題や専門的内容に関する検討・環境整備が進められるので、動向に注意が必要。

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