第28回公開シンポジウム「平成の終わりに食の未来を語ろう」の報告

【テーマ】「平成の終わりに食の未来を語ろう」
【日 時】2018年11月17日(土) 13:30~16:30
【会 場】東京ウィメンズプラザホール
【主 催】食生活ジャーナリストの会(JFJ)
【参加者】約80名

 「平成の食」(1989年~2018年)とは何だったのか。そして、これからの食はどうなっていくのか―食の欧米化が進み、飽食と言われた1970年代~80年代と異なり、平成の時代はエスニック料理がはやったり、さまざまなスイーツやヘルシーフードが登場するなど、食の多様性が増した絢爛期でした。最近はインターネットの出現でインスタ映え料理がブームになるなど食情報自体がエンターテインメントになる時代を迎えています。
 その一方、若い人のやせ、高齢者の低栄養、大人だけでなく、子供たちにも襲いかかる生活習慣病など健康面での問題が深刻になっています。最近は「こども食堂」が象徴するように子供の貧困問題まで起きています。こうした中、2005年に「食育基本法」が生まれ、国が食のお手本ともいえる「食事バランスガイド」を公表するなど、食の本来の姿をとりもどそうという動きも活発になっています。
 今後、こうした食の正負の両面にどう向き合えばよいのか。食料自給率が低い日本ではゲノム編集など科学技術に期待を寄せる声がある一方、伝統的な和食や有機農業に活路を見出す人もいます。日本の食はこれからどうなるのでしょうか。また、これからどうすべきでしょうか。家族にとって、食とは何なのでしょうか。
今回のシンポジウムでは、「平成の食」とは何だったのか、そして、これからの食はどうなっていくのか、さまざまな角度から「食」を語り合いました。講師お二人による基調講演の後、初めての試みとしてJFJの会員6人によるそれぞれの得意分野のリレートークが行われ、その都の会場参加型のクロスディスカッションでは活発な議論が交わされました。

【プログラム】----------------------

司会:村松 真貴子(むらまつ まきこ)、NHKキャスター、フリーアナウンサー、エッセイスト

<開会挨拶>
小島 正美(こじま まさみ)、食生活ジャーナリストの会代表幹事
敗戦から約70年、昭和から平成にかけて、食の世界は目まぐるしく変わりました。平成の時代は「食」をおう歌する多様性が増した半面、食品偽装の発生、根拠のないダイエットブーム、生活習慣病の増加、BSE(牛海綿状脳症)など、食の安全も含めさまざまな問題点も噴出しました。働く女性の増加などで家庭の食卓も様変わりし、食のあり方そのものが問われた時代でもありました。
平成のおわりに、これからの「食」をどう考えればよいのか。このシンポジウムがみなさまにとって有意義なときになりますよう期待しています。

<基調講演1>
木下 政人(きのした まさと)
京都大学大学院農学研究科助教(応用生物科学)
1962年生まれ。京都大学大学院修了、
日本学術振興会特別研究員、京都大学研修員並び
に同大学農学部助手を経て1994年より現職

「ゲノム編集技術がもたらす水産物・養殖業の未来」
私たちの研究グループは、ゲノム編集技術を応用して、肉づきのよいタイやトラフグの育種に成功しました。今後、アレルギー源のないエビやカニ、毒をもたないフグなど、魚の世界でさまざまな改良が進むと見ています。ゲノム編集技術は、従来の遺伝子組み換え技術とどう異なるのか、また魚類の養殖業をどう変えていくのか。ゲノム編集技術が社会に受け入れられるためには何が必要かもみなさんと一緒に考えたい

<基調講演2>
阿古 真理(あこ まり)
作家・生活史研究家
広告制作会社を経てフリーに。『AERA』や
東洋経済オンラインなどで執筆。著書多数

「多様性、もしくは貧困」
今後、人々のライフスタイルの多様化、移民の増加などにより、売られる食材・料理はますます多様になる。一方で、料理技術の低下や、多忙な人々の増加などによって出来合いの料理・加工食品への依存度が高くなるため、家庭で作られることが当たり前だった時代と比べ、食の多様性自体は失われる可能性が高い。人間は進歩を求めることをやめられないので、変化は止められない。そんな未来に対して私たちは何ができるのかを考える時期が来ている。

<リレートーク>
大久保 朱夏(おおくぼ しゅか)
フードライター/食のクリエイター
「認知症にやさしい食環境づくりとは」

草間 壽子(くさま ひさこ)
在来作物応援チーム「伝統野菜プロジェクト」代表
「伝統野菜がもたらす多様性を未来へ」

小池 理雄(こいけ ただお)
小池精米店三代目、五ツ星お米マイスター
「お米は古くて新しい食糧 無限に広がるその可能性とこれからの担い手の問題」

三保谷 智子(みほや ともこ)
女子栄養大学編集委員、『栄養と料理』元編集長
「残したい料理レシピの言葉」

村井 康人(むらい やすと)
REBIRTH食育研究所代表、フードバンクにいがた評議員
「子ども食堂から見た食育と子どもの貧困」

森田 満樹(もりた まき)
一般社団法人 FOOD COMMUNICATION COMPASS代表
「消費者に科学的根拠に基づく食情報を伝えるために」

<クロスディスカッション>
コーディネーター  小島 正美
モデレーター  小山 伸二(おやま しんじ)
辻調グループ 企画部 メディアプロデューサー
以 上

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