2019年10月4日 2019年度 第5回勉強会の報告

「腸内細菌と健康の最新情報を学ぶ」

・講 師:長谷耕二氏・慶応義塾大学薬学部教授
・進 行:小島正美(食生活ジャーナリストの会代表)
・会 場:日比谷図書文化館スタジオプラス小ホール(中央区日比谷公園1-4)
・参加者:47人
・文 責:小島正美

講演要旨
 腸内細菌の集まりは、よく腸内細菌叢(マイクロバイオータ)といわれているが、正確には微生物叢とそのゲノムや代謝物を指し、マイクロバイオームというのがよい。腸内細菌が人の健康に有益な作用をもたらすと最初に主張したのは、1908年にノーベル医学生理学賞を受賞したイリヤ・メチニコフだった。以来、乳酸菌の摂取が健康長寿をもたらすと考えられるようになった。しかし、腸内細菌といっても、個人や国で大きな差がある。たとえば個人でも約20兆個~約120兆個と6倍もの差がある。腸内細菌の組成もアフリカの子供とイタリアの子供では全く異なるという。その違いはその国や民族の過去の長い食の歴史が反映されているからだろう。日本人が海苔を代謝できる腸内細菌をもっているのに対し、海苔を食べる習慣のない欧米人はもっていないのはそうした例のひとつだ。
 腸内細菌の組成のバランスが崩れると自閉症スぺクトラム障害、パーキンソン病、冠動脈疾患、肥満、糖尿病、関節リウマチなどの自己免疫疾患、クローン病など炎症性腸疾患など数多くの疾患と関係があることも分かってきた。健康な人の便を移植して、疾患を治す治療も行われているが、その副作用で死亡した例もあり、まだ確立してはいない。腸内細菌の組成を健康に保つには何をすればよいか。可溶性食物繊維(マンナン、イヌリン、ヘミセルロースなど)、オリゴ糖(腸まで届き、いわゆる善玉菌のえさになる)、レジスタントスターチ(小腸では分解されず、大腸まで届くでんぷん。雑穀や豆類などに含まれる)などを含む食べ物をバランスよく摂取することが大事だ。運動不足や不規則な生活、睡眠不足は腸内細菌のバランスを崩す。ある特定の食物を食べれば、組成バランスがよくなるというのではなく、いろいろなものを食べることが大事だ。腸内細菌と健康に関する基本的な知識が身につく、とても有用なセミナーだった。