2019年2月20日 2018年度 第7回勉強会の報告

「乳幼児期の「食べる機能」の獲得と『噛む育』の重要性」

・講 師:田中美智子氏(管理栄養士・健康咀嚼指導士・滋賀県糖尿病療養指導士)
  進行:道盛法子(JFJ幹事)
・会 場:日比谷図書文化館(千代田区日比谷公園1-4)
・参加者:41名
・文 責:道盛法子

近年、保育の現場では「野菜スティックをうまく食べられない」など、噛めない子どもの増加を心配する声があがっているといいます。食べる、飲み込むといった機能は、あらかじめ人間にプログラムされた機能ではなく、子ども自身の食経験によって徐々に育っていくものです。食べる機能の発達は個人差が大きく、さらに周囲が成長過程での関わり方を誤ることによって子どもの「食べる機能」の発達が妨げられてしまうこともあります。今回の勉強会では、今子どもの「食べる機能」にはどんな問題が起こっているのか、その理由について、産婦人科や歯科、行政などの現場で「噛む育」の実践・教育に携わる田中美智子氏を招きお話しいただきました。

●講演の要旨は以下の通りです。
1.今の子どもの現状
現代の子どもに見られる特徴に、手をつかず顔から落ちる、ぶくぶくうがいができない、ろうそくの火が消せない、筆圧が低い、正座ができない――などがある。乳幼児栄養調査では硬いものが「噛めない」「噛まない」など咀嚼に関わる問題も指摘されている。その背景には、軟らかい食品の増加や、軟らかい食品・食べ物を好む社会的な風潮、乳幼児向けの“便利グッズ”(実際には機能発達を妨げる可能性があるものを含む)の増加などがある。日常生活のなかでの動きに、井戸での水汲みや洗濯板での洗濯など多様な体の動きがあった昭和初期と比べると、現代は体を複雑に動かす機会が減っている。適応能力や体力が使わなければ成長・発達しないように、噛む機能も同様で、噛まない食事をしていると噛めないまま育ってしまう。

2.乳幼児期の食べる機能の獲得
「食べる機能」は生まれつき備わっているものではなく、生まれてから段階を踏んで習得していくものである。具体的には、乳児期は舌と唇と顎を一体的に動かす「吸綴」という不随意運動で母乳を取り入れるが、成長するに伴い口唇は閉じ、舌や唇、顎を食べ物の状態に応じて分離して動かす動作になっていく。色々な食体験と全身の運動がこの過程の発達に大きく関与している。例えば、ハイハイができるようになることで食べ物に手を前に出せるようになる、一人座りができるようになることで手づかみ食べができるようになるなど、全身の発達と食べる機能はリンクしている。

3.噛むことを育てるための工夫
ポイントは①鼻呼吸、②姿勢、③食べ物の与え方、である。食べる機能や噛む力は、発達に応じて備わっていくものであり、個人差がある、まわりの大人が子どもの食べる様子を見て、発育状態に合わせた関わりをすることが重要。特に子どもの食事時、足底が接地していることが大切である。保育の現場でも、給食ではバスマットなどを使って足の台を作っているところもある。このほか、離乳食を与える際のスプーン選びや、料理の載せる量、与え方などにもポイントがある。
また、手や口を協調して動かすことを覚えるうえで手づかみ食べは有効と考えられる、食べ物を細かく切らずに、大きい状態で用意し、子ども自身で手でつかんでかじらせるのは、食品を認識したりにおいを感じたりする機会を与えることになる。歯が生えそろったら、骨・皮・種のあるものにチャレンジさせると、頬や舌を使った色々な動きを習得する機会となる。一口サイズで、子どもが食べやすいものを与えていると成長・発達の機会を作れない。育てるには負荷をかける必要がある。

4.実習「食べると脳、噛む機能」
コップに入った水を①ふつうに飲む、②足を上げて飲む、③スプーンで啜り飲みをする、④隣の人に飲ませる、などの体験実習を行った。