「MSC〜持続可能な漁業と海のエコラベル〜」の報告

・講師:牧野倫子氏(海洋管理協議会(MSC)広報担当マネージャー)
・2013年9月19日(木)午後6時半~8時
・於:東京ウィメンズプラザ 第一会議室
・参加者:25名
・まとめ:村井康人

 世界人口の増加と途上国の経済成長に伴い、資源獲得競争が激化している。
水産資源も例外ではない。2006年11月、アメリカの科学専門誌「サイエンス」に、「このままでは2048年には天然の魚介類が壊滅的な状況になる。」と予測する報告が掲載されて大きな話題を呼んだ。
 限りある資源をいかに持続可能な方法で利用するのか。海のエコラベルと呼ばれるMSC認証制度について、海洋管理協議会(MSC)広報担当マネージャー牧野倫子氏に、設立の背景とその制度についてご紹介いただいた。

■ MSC認証・漁場から食卓まで

 1960年から2003年の間に、世界人口は30億人から63億人へと2.1倍に増加。一方、世界の水産物の消費量は、3,800万トンから1億3700万トンへと、人口増加を上回る3.6倍に達した。水産物の消費が大きく伸びた要因は、BSEや鳥インフルエンザで食肉への安全性の懸念、健康食として魚食が注目されたことによる。
 海洋管理協議会(MSC)は、海洋環境の保全を図りながら持続可能な漁業を実践している漁業者を認証する制度を設けた。消費者に届く最終段階まで、その商品がいかに持続可能性に配慮された商品であるかを示す仕組みがMSC認証(海のエコラベル)だ。
 MSC認証を得た漁業による商品は、環境に配慮した商品としてブランドとなり、国内外に流通する。世界では広く知られている認証制度だが、日本での認知度はまだ低い。

■ MSC認証制度の広がりとそのメリット

 MSC認証制度の概要から申請、審査、認証の流れについてわかりやく説明された。
 米国のウォルマートは、取り扱う天然水産物の100%にMSC認証をつけることを目指すと発表、また、欧州と米国のマクドナルドでは、販売するフィレオフィッシュにMSC認証された魚を使用している。当日は、MSC認証ラベルをつけたマクドナルドのパッケージの実物が紹介された。
 日本では、2008年に京都府舞鶴の漁業者が日本初、アジア初のMSC認証をとったことでテレビに取り上げられ、関西イオンでの取り扱いが始まった。2013年5月には、北海道の帆立貝漁業者が認証され、海外からの問い合わせが増加した。
 MSC認証を取得するには、予備審査を経て本審査がおよそ1年と、長い期間がかかるが、漁業者にとっても認証のメリットは大きい。水産物のブランド化が図れることで、漁業自体が持続性を持つことができる。漁業者の就業が維持できれば、漁業関連産業での雇用が増え、後継者の育成にもつながることとなる。
 更に地域の安定に貢献し、インフラを整える下地となった事例も紹介された。

■ 日本での課題

 日本は世界有数の水産資源消費国で、持続可能な漁業への取り組みは不可欠だが、小規模な漁業者が多い日本独特の漁業と複雑な流通には課題が多い。
 最後に、消費者に対するMSC認証の認知度を向上させる取り組みの一つとして、魚食離れが進む若い世代へ向けた、大学とのプロジェクトなどが紹介された。

感想
 世界の水産資源の52%が「限界まで漁獲」しており、27%が「枯渇状態」で、水産資源の余力があと20%しかないという現実に驚いた。
 1時間半では足りないくらい聴講者の興味を引くテーマで、今後の活動や認証に関する様々なことについて次々と質問が出た。なかには、大学生も出席しており、食関係のサークルなどもあるので、MSC認証の普及に貢献したい。との声も上がっていた。
 牧野氏の「消費者が、水産物を持続可能性という視点で選べるようにしたい。」という言葉に共感した。

タイトルとURLをコピーしました