2022年9月7日 2022年度西日本支部第1回勉強会の報告

木桶職人復活プロジェクト 〜日本の発酵文化を世界に発信してきた10年〜

・演 題:木桶職人復活プロジェクト 〜日本の発酵文化を世界に発信してきた10年〜
・講 師:山本康夫氏(ヤマロク醤油株式会社 五代目・代表取締役)
・進 行:小山伸二
・参加者:会場参加4名/オンライン参加23名
・文 責:小山伸二
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木桶が、日本の食を支える調味料である醤油、酒、味噌、味醂などに欠かせないものだったのが、戦後、ホーローやステンレスのタンクの普及により、需要が落ち込み、2009年には20石、30石といった大型の木桶を作れる桶屋は1事業者のみという状況になっていた。
そこで、講師の山本さんは、木桶仕込みの醤油メーカーの使命として、子や孫の世代に木桶文化を継承していくためにも、「木桶職人復活プロジェクト」を立ち上げた。
JFJでは、2014年に、プロジェクトを立ち上げて3年目の山本さんをお招きして勉強会を開いたが、今回、改めて、その後の活動を含め、このプロジェクトの意義とこれからの展望についてお話を伺った。

木桶を使った醤油造りが、生産量の1%以下という現状のなか、木桶自体は100年から150年は使い続けられるので、補修以外の仕事の新規発注がないなか、大型の木桶職人の技術伝承が、非常に難しいという現状にあったこと。このまま、放置すれば、「木桶」文化そのものが、絶滅する。こうした危機意識をバネにして始まった「木桶職人復活プロジェクト」。醤油製造メーカー自身が木桶作りを学び、その仲間を増やしていくために、定期的に木桶を作る作業に参加してもらう、さまざまなワークショップ、勉強会などを企画してきた。
「木桶仕込みの醤油」の国内流通量を現状の1%から2%を目標に掲げ、同業者と連携しながら、木桶仕込みの醤油の認知度をあげていき、日本各地も醤油メーカーでかつて木桶仕込みをしていたメーカーのなかに、木桶仕込みを「復活」させる動きもできた。
つまり、「木桶職人復活プロジェクト」は、ジャンルとしての伝統的な「木桶仕込み醤油」の復活させ、市場でのブランド力を高めていく方向にも向かった。
また、伝統的な木桶仕込みの醤油は、ステンレスなどのタンクとは違い、それぞれの作り手の個性が際立つので、本来はライバルでもある同業者同士が連携できるという側面もある。 こうして、世界的にも「発酵文化」が注目されるなか、「木桶仕込み醤油」そのものの魅力度アップやブランド力の強化が「木桶作り」を通して実現している。
さらに、「木桶で仕込んだ日本の伝統的な製法の醤油」の認知を海外でもあげるために、2021年3月には、「木桶仕込み醤油輸出促進コンソーシアム」を立ち上げた(同年10月末時点で国内の醤油メーカー25社が参加)。今後も積極的に、木桶仕込み醤油と100%木桶仕込み醤油だけで作った加工品の告知と普及を促進するために、海外のシェフたちに実際に試食してもらうイベントなども開催してきた。
さらに、木桶仕込み醤油の魅力発信の海外向けのWEBサイトの開設や、国際的な食の展示会などに、メーカーの垣根を越えて、「木桶仕込み」をプロモーションする動きは注目されている。
今後は、国内外で、木桶仕込みの醤油という「高付加価値」の醤油の認知度をあげながら、大学などとも連携して、木桶仕込みの醤油と、ステンレスなどのタンク仕込みの醤油の科学的分析を通して、木桶仕込み醤油の魅力を発信していこうと考えている。
また、2022年2月に発足した「木桶仕込み味噌輸出促進コンソーシアム」とも連携して、「木桶」を使った日本の発酵文化の魅力発信と輸出の拡大を目指していく。
こうした未来志向の取り組みが、山本さんの思いでもある「子や孫の世代に木桶仕込みの本物の醤油を残し伝える」ことにつながることを、強く感じた。