2021年11月30日 2021年度第31回公開シンポジウムの報告

SDGs時代の食品表示を考える

【テーマ】現状の課題 そしてあるべき姿とは?
     SDGs時代の食品表示を考える
【日 時】2021年11月30日(火)14:00~16:40
【会 場】東京・日比谷図書文化館 スタジオプラス小ホール&オンライン中継
【主 催】食生活ジャーナリストの会(JFJ)
【参加者】105名

 最先端のテクノロジーを用いた食料生産と食品製造の技術革新によって、これまでになかった食べ物が続々と生み出されつつある今日、食品表示は新たな対応を求められている。一方で、コロナ禍で家での食事が増え、身近な食べ物への関心があらためて増したともいわれる。複雑で分かりづらいと思われがちな食品表示が、読みたくなり、消費者がよりよく活用できるには、メディアは何を伝えていったらよいのか探った。

【プログラム】
司会・進行:中野栄子(JFJ幹事。日本経済新聞社シニアエディター)
*講演者の所属・肩書はシンポジウム開催日のものです

<開会挨拶>
畑中 三応子(JFJ代表幹事)

<基調講演1>
西井 孝明(にしい たかあき)
味の素株式会社 取締役 代表執行役社長。最高経営責任者。同志社大学文学部社会学科卒業。1982年に味の素株式会社入社。味の素冷凍食品株式会社常務執行役員を務めた後、本社人事部長、執行役員、ブラジル味の素社代表取締役社長を経て、2015年6月に本社代表取締役社長に就任。2021年6月より現職。「アミノ酸のはたらきで食習慣や高齢化に伴う食と健康の課題を解決し、人びとのウェルネスを 共創 します」というビジョンのもとに、味の素グループを牽引する。

食品表示に対する味の素社の取り組み
~うま味調味料の表示問題や風評被害にどう対処したか~
味の素社がうま味物質を発見し、グルタミン酸ナトリウム(MSG)を「味の素」と名付けて発売した経緯と製法について説明。続けて1980年代くらいからMSGの風評被害に悩まされるようになった状況を伝え、「無添加・無化調」表示に対する見解を述べた。また、風評被害を受けた歴史から、正しい情報伝達がなされないことによるリスクを重視しているとし、近年力を入れているリスクコミュニケーションについて紹介した。2020年から開始した年に1度の「食と健康の未来フォーラム」は大きな反響を呼んでいる。また、米国でも“No MSG”と否定するのではなく、「MSGを知ろう」と訴える“Know MSG”という消費者キャンペーンなど、ネガティブイメージを払しょくする活動を様々な形で展開し、一定の成果をあげている。

◆講演資料(部分抜粋)

<基調講演2>
池戸 重信(いけど しげのぶ)
公立大学法人宮城大学名誉教授。農林水産省消費生活課長、(独)農林水産消費技術センター理事長、宮城大学食産業学部教授(食産業学部長、副学長)、宮城県産業技術総合センター副所長、JAS協会会長、消費者庁「食品表示一元化検討会」座長、消費者委員会食品表示部会委員等を経て、現在、日本農業経営大学校講師、宮城大学大学院非常勤講師、消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会」座長等。趣味は山手線沿線定点撮影。

食品表示制度の動向と課題
そもそも食品表示とは何か。まず、食品の提供サイドと消費者を結ぶ情報伝達媒体であり、両者間の信頼の絆であるとし、法令の方向だけではなく、消費者の方向を注視すべきであると述べた。しかし、その制度は、ルールが多岐にわたり法的基準も膨大であり、さらにはつねにルールが追加修正されるなど食品関連事業者にとってはその活用は困難である。その複雑な内容と機能、消費者の理解度、新たな制度化以降の課題と今後の制度の方向について詳細を講演した。

◆講演資料(部分抜粋)

<基調講演3>
森田 満樹(もりた まき)
消費生活コンサルタント。2011年に消費者団体である(一社)Food Communication Compassを設立。食品安全、食品表示、消費者問題について講演・執筆活動を行っている。食品表示一元化検討会、食品の新たな機能性表示に関する検討会、食品添加物表示制度に関する検討会、特定保健用食品制度(疾病リスク低減表示)に関する検討会、アフィリエイト広告等に関する検討会など消費者庁の食品表示関連委員を多く務める。東京海洋大学非常勤講師、大妻女子大学非常勤講師。

消費者から見た食品表示現状と課題
まず現在そのガイドラインの制定が検討されている、食品添加物の無添加や不使用表示の話題を介して食品表示の関連法規等を解説した。続けて、SDGsと食品表示には、食品ロスなど強い結びつきがあるとし、最近の行政の取り組みを紹介。さらには、培養肉など新技術を用いた食品、すなわちフードテックに触れ、こうした食品の表示の決まりをどう定めていくかの課題を示した。多くの情報が盛られる食品表示において、限られたスペースである容器包装ではなく、QRコードを用いたデジタル化モデルの検討も行なわれていることを紹介し、食品表示の今後について消費者の選択の課題をまとめた。

◆講演資料(部分抜粋)

<パネルディスカッション>
コーディネーター/中野 栄子(日本経済新聞社シニアエディター)

パネリスト/西井 孝明/池戸 重信/森田 満樹/畑中 三応子

「食品添加物の不使用表示に関するガイドラインが成立すれば、法的拘束力はなくても抑止効果は期待できる。一方で無添加表示は完全になくなるのではなく、誤認を生じさせないようなものなどでは残るものもあるだろう」(森田)

「ガイドラインができることの意義は大きいと思う。当社でも対応に備えている」(西井)

「学校給食衛生管理基準の記述を基にした、無添加が理想という根強い誤解があるのは憂慮すべきだが、私が食品表示検討会の委員をしているとき、報告書に問題点を指摘できたことは一歩前進だ。委員の有志で文科省に申し入れもしたが、多くの消費者が誤解しているのでそこでのリスクコミュニケーションが先決との見解で、堂々巡り感が拭えない」(森田)

「消費者の誤解は解消すべき課題だ。世界135カ国で事業展開している当社から見れば、日本の食が最も安全といえる。食品添加物による事故は一つもない。メディアの皆さんにはこうしたことを正しく報道してほしい」(西井)

「確かに消費者の誤解には、我々メデイアの責任が大きい。記者の不勉強で、『無添加表示は良い』という消費者の誤解をそのまま記事にしている。その間違った記事が拡散され、消費者の誤解がさらに深まっている」(中野)

「大宅文庫で2000年からの食品表示に関する雑誌記事を検索したところ、食品偽装事件などが起こった年は件数が急激に増えている。今年2021年は重要な年にもかかわらず、記事はただの1件だけしかない。事件があるときだけ、センセーショナルに報道するジャーナリズムには問題がある」(畑中)

「消費者の方には、この機会に食品添加物とは何かについて、改めて認識してほしい。その意味でメディアの存在は大きい。日本は食品安全行政が機能しており最も安全と言えるがその点は報道されない。平常時に時間をかけて食品表示の基本的なことを身につけてほしい」(池戸)

フロアからは「消費者が不安に思うような物質(食品添加物など)は、身近なものにからめて分かりやすい解説があるとよい」「SNSも活用し、若い人を含む幅広い世代に情報を届ける取り組みをしてほしい」などの意見や要望が寄せられた。