2021年12月6日 2021年度西日本支部第3回勉強会の報告

「瀬戸内漁業から日本の食を知る」

・演 題:「瀬戸内漁業から日本の食を知る」
・講 師:鷲尾圭司 (日本伝統食品研究会会長。前水産大学校理事長)
・進 行:江弘毅
・参加者:会場参加9名/オンライン参加31名
・文 責:小山伸二
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<講演概要>
講師の鷲尾圭司氏は京都ご出身で、京都大学大学院農学研究科博士課程で水産物理学専攻され、卒業後は、兵庫県明石市の林崎漁業協同組合に就職。漁場環境調査や海苔養殖漁業の生産指導、漁船漁業の資源管理や魚食普及活動に従事されてきた。その後、京都精華大学環境社会学科教授を経て、農林水産省所管の独立行政法人水産大学校理事長に就任され、水産人の育成をはかると共に、水産業の持続的発展と海の環境保全に取り組まれた。
まさに、水産業の現場から研究・教育の場まで体験されて来られた方である。

今回は、古くから京都や大阪など上方の食卓と「料理文化」を支えてきた「瀬戸内の海の幸」についてたっぷりとお話いただきました。

講演は、文化的な視点、歴史的な視点から、「美味しい魚」の現場のお話まで、主に「瀬戸内」を舞台にしながら、日本全体の水産業、魚食文化をも展望できるものになりました。

まず、瀬戸内海の、主に昭和40年代以降の水産業の推移を各種の資料を読み解きながら解説。
近年の状況について、水質などの改善は見られるものの、人工海岸化など自然環境の喪失と貧栄養化や気候変動による生態系の不全などを指摘。こうした状況下で、資源管理を徹底しても不漁が続くという現状もあるとのこと。

伝統的に「明石」の魚はうまいとされてきた背景には、漁場の豊かさ(栄養や、潮流)による素材の良さもさることながら、魚を扱う技術、さらに京都、大阪など食文化の発展した都市に近接したことの強みがある、と。
食の「美味しさ」の背景を総合的な視点でのお話は、まさに快刀乱麻を断つ切れ味でした。 とりわけ、明石の活魚の4通りの処理の仕方の意味など、それぞれに科学的な解説も加わり納得できました。

講演の後半は、瀬戸内および日本全体の水産業の課題を展望したうえで、魚食における消費者教育(啓蒙活動)の重要性を説かれ、下関におけるご自身の活動(「唐戸魚食塾」)の取り組みについても紹介していただきました。
「欲望の解放」的なグルメ消費行動を批判しつつ、単なる消費拡大よりも、「消費の質」を改善することが重要。そのためには、魚の質、美味しさを、ひと手間かけて調理することの大切さだと力説されたことに、深く共感しました。

今回のお話は、研究者・教育者としての歴史や資料を背景にしながら、本当に豊かな食文化、「美味しい」魚食文化とは何かという視点を、現場に精通し、自ら実践されている圧倒的な説得力の上で展開されており、充実した勉強会となりました。


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※無断転用禁止 瀬戸内漁業から日本の食を知る:講演資料(PDF)