2021年7月20日 2021年度第3回勉強会の報告

「培養肉の開発はどこまで進んでいるか?」

・演 題:培養肉の開発はどこまで進んでいるか?
・講 師:インテグリカルチャー・川島一公 取締役CTO/創業者
・進 行:大森亜紀(食生活ジャーナリストの会幹事・読売新聞記者)
・参加者:オンライン開催 85名
・文 責:大森亜紀

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 世界の人口や肉の消費量が増え、今のように家畜を育てて肉を食べ続けると、地球環境に過剰な負荷を与えることになると指摘されています。その解決策の一つとして注目されているのが「培養肉」。大豆などを使った代替肉とは違い、細胞を培養して肉を作る技術です。その最先端を走る日本企業「インテグリカルチャー」の創業者で、取締役CTOの川島一公さんに、培養肉の作り方から世界の動向、規制や課題などを幅広く話してもらいました。

【講演要旨】

■インテグリカルチャー起業と「細胞農業」
細胞を育てる独自の技術「CulNet System(カルネットシステム)」で、多様な生物資源を活かし、みんなを幸せにすることがインテグリカルチャーの目的だ。子供のころ、植物に虫が寄生すると、こぶのように膨れる「虫こぶ」を見て関心を持ち、生物や細胞を研究してきた自分と、羽生雄毅・代表取締役CEOが東京・本郷三丁目の「LAB+CAFE」で出会って2015年に共同創業した。
細胞農業とは、取り出した細胞を生体の中にいると「勘違い」させて、大きく増やす技術だ。肉だけではなく、そのほかの食品や皮革などにも活用できる。カルネットシステムとは、低コストの培養液で特定の細胞を育てて、本来なら動物や植物から収穫される産物を作る仕組みのこと。農地不要、超省資源で産物を作ることを目指している。

■戦国時代に突入した世界の「フードテック」
世界の人口増と食肉需要増に伴い、世界中で代替たんぱく質のベンチャーが大量に生まれている。投資マネーがフードテックに流れ込んでいるが、日本国内の投資額は少ない。2040年には約70兆円の肉市場のうち、35%が培養肉、25%が植物由来の代替肉、40%が家畜によるものになるという市場予測もある。培養肉の環境負荷については評価が定まっていないが、エネルギー使用量が半減し、温室ガス排出量は4%程度と試算している。

■細胞培養肉の最前線と課題
細胞の培養には、適切な栄養状態(ミネラルやアミノ酸など)を作り、血の成分(血清や成長ホルモン等)を入れることが必要だ。医療分野で細胞を培養する再生医療と細胞農業は、原料となる細胞を調達し、培養液で育てる点では重なるが、法規制や流通に差がある。
イスラエルやアメリカ、シンガポールなど様々な企業が培養肉に取り組んでいるが、培養の手法や使う成分は異なる。既存の成長ホルモンは高価で、食品添加物として認可されていないものもある。カルネットシステムは、細胞を育てる過程に臓器間で細胞同士が助け合う相互作用を取り入れ、培養液のすべての成分を食品添加物として認可されているものだけで作っている強みがある。
細胞を増やすことはできるが、その細胞を筋肉など組織の形にするには、さらにブレイクスルーが必要だ。量産化にはコスト面の課題もある。自社ブランドで2022年春にフォアグラ、25年にはステーキの製造を目標にしているが、あわせて、製造装置も販売し、作り手が味のカスタマイズをしたり、学校教育の場で使ったりしてもらうことも考えている。