2020年11月23日 2020年度第30回公開シンポジウムの報告

「コロナ禍の<食>とメディア――海外と日本それぞれの現場から」

第1部 現地報告・パリ・ソウル / 第2部 討論 産地・外食・家庭の食卓

【テーマ】コロナ禍の<食>とメディア――海外と日本それぞれの現場から」
     第1部 現地報告・パリ・ソウル / 第2部 討論 産地・外食・家庭の食卓
【日 時】2020年11月23日(月・祝) 14:00~16:45
【会 場】日比谷図書文化館4Fスタジオプラス小ホール+zoom/ハイブリッド開催
【参加者】100名

第1部 現地報告・パリ・ソウル
ファシリテーター 小山伸二(JFJ幹事・辻調理師専門学校)

JFJ第30回公開シンポジウムは、新型コロナウイルスの感染拡大の中、オンライン配信も活用しながら食の現場にどのような変化が起きているか現状に迫り、課題を探った。
シンポジウムの主なトピックを報告する。

第1部はパリとソウルをオンラインで同時につないだ。パリの関口涼子氏(作家、翻訳家、ジャーナリスト)は、外出制限の困難に直面したレストランが、ディナーの時間を早め品数を減らしたコース料理を提供したり、テイクアウトを始めるといった対策を講じたと報告した。「若いレストランジャーナリストたちは、生産者と消費者をつなぐなど、自分ができることを探して動いた」と、新たなムーブメントについても述べた。
ソウルの鄭銀淑氏(紀行作家)は、ストレス解消で辛い料理を食べることがストレス解消になっていること、若者を中心にコロナ前からの個食化が加速していること、大衆食堂でも1人分ずつ小皿やワンプレートで提供されるようになり、フードロスへの意識が高まっていることを多数の記録写真を紹介しながら報告した。「出前ビジネスが活況になり、アジアらしい市場の風景が急速に廃れつつあることは辛いと感じる」とも話した。

関口涼子氏の講演スライドはこちら

鄭銀淑氏の講演スライドはこちら

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第2部 パネル討論
ファシリテーター 長沢美津子(JFJ幹事・朝日新聞社)

第2部は「外食・レストラン」「家庭の食卓」「農業・地方」と、それぞれの立場からコロナ禍における日本の現況について議論した。

はじめにJFJ幹事で朝日新聞社の長沢美津子氏が、「中国・武漢で原因不明のウイルス性肺炎患者が増えている」(2020年1月8日朝日新聞)という報道から11月までの新型コロナ関連の報道を振り返った。「ウイルスが<食>を介して生まれる人と人のコミュニケーションにNOを突きつけた」と述べ、話題提供を行なった。

小竹貴子氏(『クックパッド』コーポレートブランディング担当本部長)は、74カ国32言語で展開する「クックパッド」の検索ワードを分析。世界各地の料理習慣がどのように変化したか述べた。たとえば日本では、外出自粛で子どもとお菓子作りを楽しむ人が増えたことが顕著にデータにあらわれたという。またコロナ禍で「簡単」というキーワード検索がはじめて下がり、単なる手抜きではなく、おいしい素材をシンプルな調理で楽しみたいというポジティブな変化が垣間見えると話した。

小竹貴子氏の講演スライドはこちら

門田一徳氏(『河北新報社』記者)は、「銅製せり鍋の開発プロジェクト」で生産者、飲食店、住宅設備メーカーなどがチームになって仙台名物せり鍋文化を盛り上げた事例や「鳴子の米プロジェクト」「くりはらツーリズムネットワーク」の取り組みを紹介。「新型コロナ感染拡大による緊急事態宣言で、生産現場から消費地への流通がストップしたことが、地元の農と食の豊かさを見つめ直すきっかけになっている」と述べた。

門田一徳氏の講演スライドはこちら

君島佐和子氏(『料理通信』編集主幹)は、コロナ禍の食についてWeb 料理通信の「未来のレストランへ」「大地からの声」の連載を通じて飲食店の社会的な役割を模索し、第一次生産を見直す情報発信をしてきた経緯を述べた。
「フランスのシェフはパブリックな仕事をしているという意識を強く持っているが、日本のシェフはおいしい料理を作ることに集中しすぎて、レストランの社会的な役割を意識している人が少ない」との認識を示した。

君島佐和子氏の講演スライドはこちら

最後に登壇者全員で討論の時間を設け、再びパリとソウルとつないで意見交換をした。限られた時間で議論を深めるところまではできなかったが、感染の規模と対策で、ある意味先を行っていた海外の動きは日本と響き合うことも多く、今後を考える大事な材料になった。
コロナ禍は、食の持っている力も、いまの食をめぐる課題もあぶり出している。
現状を報告しあった今回の「次」をいずれかの段階で考えていこうと提案し、会を締めくくった。

また、JFJ会員にはシンポジウム参加申し込み時に「コロナ禍で起きた食の変化」「これから社会の中で食はどう変わっていくか?」について質問。集まったコメントをプロジェクターに投影したことも書き添えておく。

文責・会場進行:大久保朱夏(JFJ幹事・フードライター)