砂田 登志子 食生活・健康ジャーナリスト
平成16年(2004年)4月19日 月曜日
産経新聞夕刊 「最前線インタビュー」より

乳幼児から“食育・選食・食戦”

健康づくりの生涯学習「食育」運動が、全国で広がっている。栄養バランスを考えて、楽しく食べる草の根運動は、最良の予防医学。生活習慣病などが増えるなかで、乳幼児からフードファイトを心がけたい。ジャーナリスト・砂田登志子さんに聞いた。

Q:食育とはどういうものか
A:食育は健康、文化環境、農業・・・生活の質すべてに直結する生涯学習のことです。食は健全な社会を作る土台。幼児期からつくる喜びや、味わう喜びを参加・体験し、自分の健康を自分で守る知恵を体得していくのが、食育だと思います。

Q:日本の食育の実情は
A:近年、復活した食育という言葉は、新語ではありません。百年前まではかなり知られた子育ての基本。食・体・知・才・徳の五育があり、食育はしつけの根幹でした。いま、国会に上程中の「食育基本法」が具現化すれば食育の日、食育協会、食の甲子園的活動が勢いづき、おいしく楽しく食べて、元気にすくすく育つ子供をうんと増やしたい。食の安全・安心感をさらに高めて、食料自給率の向上を図るため日本のものを食べようという国産国消、地産地消、旬産旬消をめざすべきではないでしょうか。

Q:食育のキーワードは
A:ふたつあります。食を上手に選び組み合わせる選食と、肥満やがん、糖尿病など、生活習慣病を防ぐ食戦(フードファイト)です。健康づくりしは、食を賢く選んで、病気にならない身体をつくることが基本。

Q:食育は、最善の予防医学の一環か
A:そうです。高騰が続く医療費の削減が期待できる最も大切な予防医学なのです。正しい食育で、いつまでも若々しく気力体力に優れた健康維持が可能となります。

Q:サプリメントの普及など、近年の食文化の変化をどのようにみるか
A:21世紀は、国際競争が激化して不測、不確実な自由化が一層進む自己責任のモデルなき新時代。サプリメントはうまく活用すればいいでしょう。欧米諸国など食育先進国の医学界では、医師と互角に活躍する臨床栄養士が多く、食事療法や栄養療法の認知度が高い。

Q:楽しい食育が求められますね
A:食育は、人をよく育てる。食事は人に良い事ではないでしょうか。あえて食育三きょう育を挙げてみますと、強(丈夫)、共(一緒)、郷(伝統、故郷)で集約されると思われます。

Q:今後の課題は
A:日本食と食文化の伝承に本腰を入れて歴史、由来に誇りを持つ日本人を増やすためにも、国際パーティーなどでの晩餐メニューに日本食を優先できる“味の箱舟運動”を世界に広げていきたいですね。

(聞き手 速水 洋一)