2007.09.05
・テーマ:食の「メディア・バイアス」の何が問題か
・講師:松永和紀(科学ライター)
・平成19年9月4日(火)、19:00~20:30
・於:家の光会館会議室
まとめ:佐藤達夫
第3回勉強会は、『食卓の安全学-「食品報道」のウソを見破る』『踊る「食
の安全」-農薬から見える日本の食卓』(いずれも家の光協会発行)『メディア
・バイアス-あやしい健康情報とニセ科学』(光文社新書)などの著書がある科
学ライターの松永和紀(まつながわき)さん。
BSE、O-157、中国産野菜、ミートホープ、白い恋人等々、食の安全・
安心を脅かす出来事や事件があとを絶たない。多くの人は、その原因は生産者や
輸出国や食品メーカーや流通業者にあると考えている。しかし、松永さんは、そ
れだけではなく、むしろそのこと以上に、メディアのあり方(マスコミの報道の
仕方、と言い換えてもよい)こそ、「消費者の食品不安」を増大させる主原因で
あると分析している。間違った報道が、消費者の誤解をさらに拡大する--その
現状を、松永さんは「メディア・バイアス」と表現する。
松永さんは農薬を例にあげて、科学情報(科学者)との接し方、提供の仕方に
ついて解説した。
その一例として、あるコンビニチェーンが、子育て中の働く女性をターゲット
にした新戦力として、有機・無農薬野菜を使った離乳食や食品添加物を使わない
弁当を売り始めたことを紹介する新聞記事を取り上げた。記事中に明言してこそ
いないが、この記事は明らかに「有機・無農薬野菜や食品添加物不使用のお弁当
は健康によい」と言うことが大前提として書かれている。
しかし、松永さんは、日本の法律をきちんと守って生産したものであれば、農
薬を使用した野菜よりも有機・無農薬野菜のほうが健康によいということは科学
的に証明されてはいない、という。記事の書き手が、このことを確認した上で書
くのであればいいのだが、確認をせずに(あるいは何も知らずに)「無農薬は健
康にいい」と思いこんで記事を書くのは大きな問題であるという。
松永さんは、他にもいくつかの具体例を挙げて、メディアが発生源となってい
る「食の危機」が増えていることを指摘した。また、記者や編集者やライターは、
学者の発言をそのまま紹介することが多いが、つねに学者が正しい発言をすると
は限らないので、その発言の根拠になっている学術論文を調べるなどの努力が必
要だという。
これは、相当な時間とエネルギーと判断力を求められる作業である。かなり厳
しい要求ではあるが、現代は、それほどに、食生活ジャーナリストが重要な責任
を負わされている時代なのだ。
今回の松永さんの勉強会は、自分たちの努力の足りなさと責任の重さを痛感さ
せられた内容であった。