2010年6月16日 2010年度第2回勉強会

「クジラ問題の解説と鯨料理の試食会」の報告

テーマ:クジラ問題の解説と鯨料理の試食会
講師:梅崎義人氏(水産ジャーナリストの会会長)
平成22年6月16日(水)、18:00~20:00
於:KURIKURI(東京都千代田区)
参加者:22名
まとめ:佐藤達夫

 捕鯨は日本人にとって身近な問題であるにもかかわらず、環境保護団体グリーンピースによる過激な映像ばかりが印象に残り、正確な情報が得られてはいない。そこで今回は、食生活ジャーナリストの会会員でもあり水産ジャーナリストの会会長の梅崎義人氏に、クジラ問題の現状を解説してもらい、その後、日本の食文化として重要な位置を占めてきた鯨料理の試食会(有料)を行なった。
現在、日本では沿岸における小型クジラの捕鯨と、北西太平洋並びに南極海における調査捕鯨が行なわれている。梅崎氏が、ここに至る経緯をごく簡単に紹介した。梅崎氏の熱い思いは別にして、事実だけを簡潔にお伝えする。

 商業捕鯨の禁止が始まったきっかけは、1972年ストックホルムで開催された第1回国連人間環境会議。ここで商業捕鯨のモラトリアム勧告が採択された。ここでいうモラトリアムというのは「商業捕鯨の一時停止」のこと。
 10年後の1982年にIWC(国際捕鯨委員会)がこのモラトリアムを可決(1990年までにモラトリアムを見直すことが付記された)。これ以降、IWC加盟国(もちろん日本も加盟している)では、商業捕鯨は行なってはいない(非加盟国あるいは脱退国では商業捕鯨を行なっている)。
モラトリアムの根拠として「鯨類の生存数や動向のデータが不足している」という主張がされていたため、日本はそれらのデータを得るために、1987年に調査捕鯨を開始した。その調査データに基づき、1992年、クジラの「改定管理方式(RMP)」が完成。コレによると、例えば南極海ミンククジラは毎年2000頭を捕獲しても今後100年間は生存数が減ることはないと結論づけている。

 捕鯨反対派は「捕鯨問題は科学や資源を超えた倫理の問題」あるいは「調査捕鯨でクジラを殺すことはなく、非致死調査で充分」等の理由で、捕鯨に反対している。日本は、「科学に基づく捕鯨の保護と適切な利用」「非科学的理由でモラトリアムを継続すべきではない」等の理由で商業捕鯨開始を主張している。両者の距離は大きく、解決の道は遠い。
 2007年に日本は、IWC脱退を含めた重大な決意を表明した。これに対し、米国などから妥協案が提示されており、現在、厳しい話し合いが行なわれている。
 商業捕鯨再開派と捕鯨反対派の論点が、まったくかみ合っていないため、話し合いによって解決する可能性は低い。

 今回の勉強会で、個人的には、「調査捕鯨」に対する認識が新たになった。私は、調査捕鯨というのは「調査」と名がついた商業捕鯨ではないか、という先入観を持っていたのだが、そうではなく、調査捕鯨は、厳密に科学的な手法で行なわれている。たとえば定められたルートに従って調査航行し、基本的に第一発見クジラを捕獲し、肉質・年齢・胃内容物などを徹底的に調べる。群れに出会ったときには乱数表を用いて捕獲する鯨を決定する。商業捕鯨のように、群れの中から最も大きいクジラを選択して捕獲するというようなことは許されない。
 このような手法で捕獲しているため、調査捕鯨は商業的にはまったく採算が合わない。「捕れた鯨は必ず自国で消費する」という規則もあるため、副産物(肉類等)を販売しているが、多大な赤字が続いている。近い将来、世界的な食糧不足が懸念されているが、クジラはそれをカバーする重要な食料だと、関係者は位置づけている。捕鯨産業が健全に発展するためにも、鯨をもっと多くの人に食べてほしい、というのが関係者の願いだ。

 梅崎氏の講義のあと、刺身、竜田揚げ、ステーキ、ベーコンサラダ、にぎり寿司、しぐれ煮、すき焼き、ハリハリ汁、串カツ等の鯨料理を試食した(写真参照)。 

鯨の部位ごとの料理説明