2015年6月23日 2015年度第1回勉強会

「届け出された機能性食品を考える」の報告

・講 師:高橋久仁子(群馬大学名誉教授)
・日 時:2015年6月23日 18:30~20:00
・会 場:東京ウィメンズプラザ第一会議室
・参加者:58名
・まとめ:村上真一

■勉強会のねらい

 かつて、食品には「効能・効果」的な文言、すなわち「機能性」を書くことは禁じられていた。それが1991年の「特定保健用食品」(トクホ)が誕生し、さらに2001年には「栄養機能食品」が設けられ、2015年4月1日には「機能性表示食品」の発足により、「機能性」を表示できる食品類も増えた。
 これら「保健機能食品」に加え、「効能・効果」を暗示させる「健康食品」も合わせて、それぞれの諸問題、特に発足して間もない機能性表示食品の問題点を考える。

■健康食品が包含する問題

 摂取することで食生活が改善され、生活習慣見直しの不要の錯覚に陥ること、高齢者にとっては代謝に過剰な負担がかかること、食用歴のない非食品が「食品」の範疇に入ること、など。
 また特定物質の大量摂取による問題も懸念される。事例としてβ-カロテン補給による喫煙者の肺ガンの罹患率が高まること。α-リポ酸錠剤摂取による自己免疫疾患の誘導など、「食品」や食品含有成分といえども、摂取量によっては危害要因にもなりうる。

■トクホの効果の実態

 トクホ(特定保健用食品)は、消費者庁の審査に合格し、許可された範囲内で保健効果が記載できる。医薬品ではないので効果は小さいのだが、それが消費者に伝えられていないのが問題。ヒトを対象にした実験研究で有意差はあったが、実用的に意味を持つかは考慮されていないもの。トクホの許可要件は「健康の維持・増進に寄与することが『期待できる』もの」だからか。

 事例の検証として、
・「食後の血糖値の上昇を抑える(難消化性デキストリン配合)」→実験研究における程度の上昇抑制が、長期的に有意差をもたらすかはデータがない。
・「お腹の脂肪を軽減」→宣伝に用いられる、効果を表すグラフを読み解くと、減少率は誤差範囲程度の微々たる量でしかない。表示方式も消費者に誤解を与える恐れが(「9.3cm2減少」の表示は一見、ウエストサイズ減少と誤解されるが、指しているのは脂肪の面積)
・トクホコーラ飲料「難消化性デキストリン配合」…根拠論文によると、1本で0.22グラムの脂質排出が増えるだけ。CMで「脂肪の吸収を抑える」と大々的に唄っているが、この程度の効果では実用的な意味はなく、消費者に過大な期待を与えてしまう恐れがある。

 このように、「厳重な審査を経て許可」されたはずのトクホの「効果」は、この程度。

■機能性表示食品の「科学的根拠」

 2015年6月12日現在、消費者庁のウェブサイトによると37商品の届出が受理。その科学的根拠を、最終製品をヒトによる臨床試験によるものは7商品(「○○に役立ちます」と表示)で、多くはシステマティックレビューを根拠論文としている(「○○に役立つことが報告されています」と表示)。
 しかしながら、臨床試験の行い方や結果の検証・参照の方法(試験期間、被験者の選出基準など)、システマティックレビューの根拠論文そのものに、様々な問題がある。
 例えば、臨床試験の被験者の選出に、効能の数値が見えやすいような偏りがあったり、効能が見えやすい期間のみ抽出されたりしている。臨床試験の結果が、機能性表示されている効果とは別の効果への裏付けとなっている、システマティックレビューの論文の内容がずさんである。など。
 これらを、「企業等の責任において科学的根拠の下に機能性を表示できる」との理由づけにするには、あまりに脆弱な内容。書類が整っていれば受理せざるをえない「届け出制」の問題点でもある。
 加えて、これまでの健康食品には、個人の体験談や架空研究会による、保健効果の「暗示・ほのめかし」が横行していた。これらが機能性食品でも、なくなっていない。効果を形容する語句を羅列するも、「効く」とまで書いていないのであくまでイメージである、というのがメーカーの姿勢。
 
 これまでに挙げた点のほかにも、「食品」なのに用法、用量的指示を行うこと自体が不自然で、この指示の必要ある製品を「食品」の範疇にすることが問題。3つの保健機能食品のうち、トクホと機能性表示食品はなくなるべきで、せめて残ってもいいのは栄養機能食品のみではないか。
 食に関する情報の氾濫で、適切な食べ方が見えづらくなっており、フードファディズム(食べ物や栄養が、健康や病気に与える影響を「過大に」評価したり信じたりすること)への依存が高まるなど、問題点は多い。「日本人の食事摂取基準2015」への準拠など、ほどほどの食生活によるそこそこの健康が大切なのである。