2013年11月8日・9日 2013年度第6回勉強会

「新潟県村上市 食のふるさと探訪ツアー」報告

・視察地:新潟県村上市内、山北町、旧朝日村高根集落
     山のおいしさ学校 高根食堂IRORI
     株式会社オークリッチ
     ミネラル工房
     宮尾酒造株式会社
     大洋酒造株式会社
・参加者:20名
・まとめ:平川あずさ・本間朋子

 2013年11月8日(金)から9日(土)宿泊型の勉強会で新潟県村上市を訪れました。
 この勉強会は当会幹事村井氏の企画で、新潟県村上地域の生産者との交流を交えて食の原点に戻り、里山と海の恵みを味わい、日本の農村の現状、村上市の地域包括事業の成功例などを個人個人の興味で学ぶという目的で行われました。

【1日目】
廃校を改装した食堂、平飼いの養鶏場、独自の塩づくり

 新潟県村上市内、山北町、旧朝日村高根集落山のおいしさ学校 高根食堂IRORI(〒958?0211 新潟県村上市高根1940 TEL.0254-73-1291)へ

 山形県と境を接する旧朝日村の山間部の集落で廃校になった高根小・中学校を改装して「山のおいしさ学校 高根食堂IRORI」を開設していました(写真1)。こちらで高根産の農産物を使った郷土料理の昼食をいただきました。天ぷらそば定食には地元の山菜のかき揚げと天皇家献上米の新米のおにぎり、保存食としての佃煮などでした(写真2)。そこで、施設のできた経緯等のお話を伺い、農家の鈴木さんのお話があり、その現場である天蓋山の麓にある天蓋高原の棚田をご案内いただきました(写真3)。

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 次に訪れたのは日本海で山形県の県境に位置する養鶏場株式会社オークリッチ(〒959-3902 新潟県村上市中浜811 TEL:0254-60-5014)こちらでは海に面した平飼いの鶏舎でHACCPを導入し、ストレスなく穏やかに育つ養鶏を実現していました。鶏たちの毛は艶々として美しく、モーツァルトの音楽を聴きながら養鶏場の富樫さんが栽培している野菜を食べて、イチジクの木に飛びうつるというような自然の姿の光景が見られました(写真4) 養鶏場から海沿いにバスで10分くらいの場所にミネラル工房(〒959-3902新潟県村上市中浜1076-2 TEL:0254-77-2993)がありました。山からの水と海の水が重なる吃水域の水を使い、独自の方法による塩造りを見学しました。熱心なお話にみなさん聞き入っていました(写真5)。(報告:平川)

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【夜の部】
地元生産者自慢の食材で交流会

 この日の宿泊先は道の駅朝日に観光拠点として整備された「みどりの里」(〒958-0261 村上市猿沢1215 TEL:0254-72-1551)。夜の部は、敷地内に建つ三面(みおもて)の民家を移築した「またぎの家」にて、地元生産者のみなさんと交流会を開きました(写真6)。JFJ佐藤代表の発声で行った乾杯のグラスの中身は、「日本酒王国」の新潟らしく日本酒。村上市内の大洋酒造の蔵出し原酒や宮尾酒造の日本酒、高根醸造場のどぶろくをお供に、クルミをまぶしたぜんまい、どんぐり(=イタドリ)の炒め物、赤かぶ漬け、オークリッチの温泉卵、蒸し野菜、菊のクルミ和え、鮭の氷頭なますと焼き漬けなど、地元の味に舌鼓を打ちました。囲炉裏端の七輪で焼いてもらった肉厚のしいたけや山北産の干物はしみじみとしたおいしさでした。また、大洋酒造の杜氏・田沢さんによる温度を段階的に変えた燗酒の飲み比べで、日本酒の奥深さを堪能しました。

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【2日目】
こだわりの原木椎茸、「鮭」と「酒」の町を散策

 この日、はじめに訪れたのは原木椎茸生産農家の「いそべ農場」(〒959-3405 村上市里本庄164 TEL:0254-66-7068)。前夜の交流会で椎茸を焼いてくれた磯部盛さんが、育苗ハウスを案内しながら「カサが閉じたものがA品、開いたものがB品。でも、カサの開いた完熟椎茸は胞子が充実していておいしい」などと、椎茸について説明してくれました(写真7)。また、記録係の平川・本間は車で近くのほ場にも連れて行っていただき、ほだ木に残っていた生シイタケの収穫を体験させてもらいました。手のひらほどの大きさの椎茸はしっとりと湿っていて、生のまま口に含むと甘くてジューシーでした(写真8)。

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 次に訪れたのは、三面川の河畔。村上の秋の風物詩「居繰網(いぐりあみ)漁」は、残念ながら見学できませんでしたが、川幅いっぱいに仕掛けられた「うらい」と呼ばれる柵の様子や(写真9)、通りかかった漁師さんが水揚げしたばかりの鮭を見せてくれました。鮭は、木箱からはみ出すほど大きく、卵を抱えたメスの腹は硬く張っていました(写真10)。
 村上に息づく鮭文化は、町屋の至るところで見られます。例えば、町屋の軒先に吊るされた塩引き鮭。頭を下にして季節風にさらすのは、保存の目的はもちろん旨味を熟成させるためだそうです。腹を真一文字に切るのではなく、腹ビレのあたりを少し残して切る「止め腹」という独特の内臓を抜く手法は、切腹を嫌った城下町・村上ならではの文化を感じさせます(写真11)。
 豪華な三段重にぎっしりとお菜が詰まったランチをいただいた「うおや」、伝統的な町家建築の鮭料理・珍味の「㐂(き)っ川」、和菓子「早撰堂」などで、参加者それぞれがお土産を買いつつ、江戸や明治期にタイムスリップしたかのような村上のまちあるきを楽しみました(写真12)。

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 そして、村上のもうひとつの「サケ」文化が「酒」。つまり日本酒です。村上探訪ツアーの終わりは、「〆張鶴」で知られる宮尾酒造(〒958-0873 村上市上片町5-15 TEL:0254-52-5181)と、地元14の酒蔵が合併した大洋酒造(〒958-0857 村上市飯野1-4-31 TEL:0254-53-3145)の二つの蔵を視察しました。
 「衛生上の問題から一般の見学はNG」という宮尾酒造は、10代目で会長の宮尾行男さんが特別に説明と醸造所の案内をしてくれました(写真13)。「安定した酒造りをするため、蔵人はすべて正社員」「経済効率を理由に酒造り(精米歩合や絞り)を制約しない」「確かな利き酒をするため、日中は甘いものを食べない」などの宮尾会長の言葉からは、「いい酒を造りたい」という信念がうかがえました。
 一方の大洋酒造は、大型バスも駐車できるアンテナショップ「和水(なごみ)蔵」を併設。試飲販売コーナーでは蔵出しの原酒のきき酒ができるほか、村上の伝統文化を伝える展示コーナーもあり、観光客を迎える設備を整えて地域活性化を目指した雰囲気が印象的でした(写真14)。

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 2日間にわたって、新潟県村上市の山、川、海、里の「食」の現場をめぐりましたが、時に豊かで時に厳しい自然環境のなか、試行錯誤を繰り返しながら実直に生産現場に立つみなさんに出会えたことが何よりの宝だと感じました。
 このツアーが、村上市の方々と食生活ジャーナリストの会のメンバーの今後の活動の一助になることを願って、報告の結びとします。

(報告・本間)