2010年3月23日 2009年度第7回勉強会

「日本のお米の行方」の報告

第7回勉強会「テーマ:日本のお米の行方」

講師:
農林水産省大臣官房食料安全保障課 食料自給率専門官 野添剛司さん(自給率向上対策)
農林水産省総合食料局食糧部計画課 課長補佐 武田裕紀さん(米粉利用の推進)
農林水産省総合食料局食糧部計画課 課長補佐 菊地 護さん(米トレーサビリティ法の概要説明)

日時:平成22年3月23日 18:30〜20:00
場所:東京ウィメンズプラザ会議室
参加者:25名
まとめ:西 妙子

東京に桜の開花宣言が出た翌日というのに、花冷えの一日。夜には雨模様の中、三氏とも詳細な資料を用意しての勉強会となった。一人20分の持ち時間をめいっぱい使おうと早口で資料を読み上げるに留まったが、その後30分予定の質疑応答は10分間延長するほど活発に行われた。

第1部 野添剛司さん(自給率向上対策)

世界的食糧危機が懸念される現在、もはや経済力があっても自由に食料を輸入できる時代ではなくなっている。そんななか、平成20年度の食料自給率はカロリーベースで41%、生産額ベースで65%にすぎない。27年度までにカロリーベースで45%、生産額ベースで76%に引き上げることを目標にしている。

<対策1:農地の有効利用>

・現在20万haある調整水田の有効利用と、稲作農家の麦・大豆などへの転作。

<対策2:消費面の見直し>

・食べ残し、廃棄食品をなくすとともに(H19年度の供給熱量は2,551kcalで、摂取熱量は1,843kcal)、栄養バランス の面からも脂質を減らし、炭水化物の増加を図る。

こうした食料生産の増大を通じて、関連産業への経済波及効果、農地確保による洪水防止機能、健康&生活習慣病の予防、環境面の便益(フードマイレージの減少/バーチャルウォーターの輸入減少/生物多様性の保全)などが見込まれる。

<参考データ>

  • 現在の日本のフードマイレージは、米、英、韓に比べて5〜3倍。
  • バーチャルウォーターの年間輸入量は627億㎥で、一般家庭の年間水使用量(1人当たり)の5.6倍にも相当する。

第2部 武田裕紀さん(米粉利用の推進)

朝食を食べない、パン食の普及などで、昭和40年の1人当たり118.3㎏(2俵)から、平成20年の59.0㎏(1俵)へ、 お米の消費量は減っている。対策として、38年前からごはんの消費量に合わせて40%の水田を生産調整に当ててきた。
その休耕田で、自給率の低い大豆・麦、あるいは米粉、飼料用米の本格生産を推進。食糧用小麦の86%を輸入に頼る現在、輸入量500万トンの1割を米粉に代替することで、50万トン=10万haの水田利用を図ろうとしている。

<参考データ>

  • 米粉用米の生産は、H20年度566トン108haからH21年度は13,041トン2,401haに増加。
  • 米粉パンの学校給食導入校も、H16年度4,067校からH20年度8,960校に増加。

<米粉の特徴>

小麦のようにグルテンを含まないので、焼いた生地にサクサク感がでる/吸油率が低いので、揚げ物にも向いている/水溶性が高いので、再加熱してもしっとり感を失わないなど。

<米粉利用の実例>

  • 大手企業の取り組み:スターバックスの米粉ロールケーキ/ローソンの新潟産の米粉パン/ニチレイフーズのフライ用の衣/セブン&アイのチルドピザ/キムラヤの菓子パン/リンガーハットの米粉餃子など。
  • 地域での米粉利用:各地の道の駅、農業高校などで米粉利用の動きが活発。
    こうした水田の有効利用と食料の安定供給確保のための支援策として、<米穀の新用途促進への法律>がH21年7月に施行された。
  • 米粉・飼料用米生産農家に対する支援(交付金:80,000円/10a )
  • 生産者、集荷・流通業者、加工業者等の整備に対する支援(補助率:定額で1/2)
  • 用途限定米穀には、包装紙に加工用米は○内に「加」、米粉用粉は○内に「粉」、飼料用米は○内に「飼」などと表示が必要 (改正食糧法H22年4月施行)。

米粉の情報 http://www.maff.go.jp/j/soushoku/keikaku/komeko/index.html

第3部 菊地 護さん(米トレーサビリティ法)

トレーサビリティとは、食品の移動を追跡する流通履歴の照会。

<米トレーサビリティ法の背景>

事故米問題(カビの生えた事故米穀を農水省が不適切に販売し、食用に不正に転用された問題を契機に、H20年11月に「米流通システム検討会」が発足。中間とりまとめを経て、法律案の提出。通常国会衆参両院で全会一致で可決、H21年4月24日「米トレーサビリティ法」公布。

  • 記録の作成と保存(H22年10月1日より施行)
    実際に取引に使う伝票類に産地(「国産」「○○国産」「○○県産」)を記載する。
  • 産地情報の伝達(H23年7月1日より施行)
    事業者間の情報伝達(伝票、商品の容器・包装への記載)一般消費者への情報伝達(JAS法で原料原産地表示義務のある場合は、それに従う/義務のない場合は産地情報の伝達が必要) →包装に産地情報を記載/webアドレスやお客様相談窓口電話番号など照会先を記載/店内に産地情報を掲示/店員が説明/購入カタログやネット注文の画面上に産地情報を掲示/メニューに産地情報を記載など。

米トレーサビリティ法の情報
http://www.maff.go.jp/j/soushoku/keikaku/kome_toresa/index.html

質疑応答

Q1.トレーサビリティに関して事故米の時は検査が適切に行われなかったが、今回の体制は?

A1.H22年10月に新組織が出来ます。まだ人数は確定していませんが約900人、1/3が管理業務で、残り2/3の人員が業者や農家を対象に監視します。さらに、食糧法が4月1日に改正され、そちらと合わせて1100人(すべて地方農政局の職員)の定員を要求しております。

Q2.米粉利用の支援について、作付面積よりも収穫量のほうが生産刺激になるのでは?

A2.流通業者との契約は数量支払いですが、多収穫品種への努力の一環支援ととらえています。
それに、数量支払いと水田利用には直接の関係はないと思います。作付すれば8万円というわけではなく、しっかりと水田を使って自給率向上を図ります。平均10a当たり530㎏の収穫を得られるよう、情報提供して多収穫品種に取り組むよう誘導していきます。

Q3.米トレーサビリティ法の目的がよくわからない。現行の法律をきちんと守ればすむことでは?

A3.米だけでなく、全食品についてトレーサビリティを確保しようというのが世界的な流れで、事業者もその方向性に異論はないものと思います。順番として米が最初になったということ。確かに「産地の伝達は余計ではないか」というご意見もあろうかと思いますが、事業者が米取引をする場合は、品種・品質だけでなく、産地によって価格が違う。事故米問題でも、自分が食べている米加工品の原料米がどこのものか分からないことが不安だったと指摘されています。JAS法では外食、対面販売が表示義務からはずれますから、事故米対策として 緊急に新しい法律で産地表示もしようということです。しかし将来的に全食品に表示義務が広がった場合、今の表示範囲でいいのか、米トレーサビリティ法が単独で存在しうるかどうか、JAS法も含めて議論が行われるものと思います。事故米問題に伴う農水省へのご批判も真摯に受け止め、組織の在り方も見直しています。

その他、国産大豆の安定需要に向けて農水省として価格政策は?/給食用米粉の価格を小麦並にできないか。/小学校の授業で米粉パンのことを取り上げているのかなど、具体的な質問が相次ぎ、国産農作物に対する関心の深さを鮮明にした勉強会だった。